前世
どのくらいの時間がたったのだろうか。
外はもう真っ暗だ。
再び、ドアをノックする音が聞こえた。
トントン…
私『はい、どうぞ』
メイド『お嬢様。明日は、いよいよ皆様の前で御披露目(おひろめ)ですね。』
私『え…?何も聞いてない…』
メイド『おかしいですわ。確かにお伝えしたはずでしたのに…』
私『…わ、私の勘違(かんちが)いかもしれないから。ゴメンね』
メイド『いえ、悪いのは私の方ですので。それでは、また、明日…』
私『お休みなさい』
メイドが部屋を出て行った。
ベッドに横になり、ボーッとしていた時だった。
突然、ドアをノックする音が聞こえた。
トントン…トントン…
おかしい。
メイドさんはもう、居ないはずなのに…。
いったい誰が…?
トントン…トントン…
私『だ…誰っ?!』
『僕だよ!カイトだよ』
小声で答える声。
私『カイト…?』
カイト『今、ドアを開けるから待ってて』
私『うん…』
そっと扉が開くと、男の人が立っていた。
カイト…。この人がカイト…。
カイト『おどかしちゃってゴメンね』
優しく甘い声。
私『い、いえ…。あの、どうしてここに?』
カイト『君を助ける為だよ』
私『私を助ける…?』
カイト『そうさ。だって、約束したでしょう?結婚するって。』
私『カイト…』
カイト『さ、早く。今のうちにこの部屋から出るんだ』
私『で、でも…』
カイト『大丈夫!僕を信じて!ね!』
私『うん!』
こうして私達は、お城を飛び出した。
沢山の道を乗り越えながら…。