私と恋をはじめませんか
そんなふたりの空気がとても優しくて、暖かくて、思わず心の中の声があふれてしまった。

「ラブラブですねぇ、いいなあ……」

「え?」

と言って私を見つめるふたりの様子は正反対。

満足そうにニコニコする有村さんに対して、崎坂さんはすごく恥ずかしそうにうつむいている。

「やったな、芽衣。俺たち傍から見てもわかるくらいいい感じのカップルなんだよ」

「……はいはい、そーですね」

「なんだよ、その棒読み」

「いいから。ほら、さっさと注文しちゃおうよ。有村、ビールでいいよね」

そのやり取りさえも甘く感じてしまう。

「小春ちゃんはどうする? 何飲む?」

「えっと……じゃあ、カシスウーロンで」

「なんだよ。小春ちゃんには聞くくせに、俺には何もなしかよ」

口をとがらせる有村さんがおかしくて、思わず声を出して笑ってしまうと、私につられるように崎坂さんも微笑んだ。

飲み物が運ばれてきて、三人で「乾杯」とグラスを合わせる。

仕事で疲れた体にアルコールが染み込んで気持ちがいい。

といっても、私はそんなに強くないから、あまり飲みすぎないようにしなくっちゃ。

「で、お客様相談室はどんな感じ?」

「はい。今のところはなんとかやってるんですけど」

「教育係、篠田なんだろ? ちゃんと教えてもらってる?」

有村さんから出てきた『篠田』という名前に、少し顔を曇らせると、崎坂さんが心配そうな声を上げた。

「どうしたの? 篠田に何かされてるの?」

「いいえ、そんなことはないんですけど……」

「けど?」

「……篠田さん、私が話しかけても目も合わせてくれないし。嫌われちゃってるみたいで」

一瞬、ふたりの動きが止まる。

あれ? 私、何か変なこと言ったかな?

思わず首を傾げる私を見つめること数秒。

「っ、ははははっ……」

「小春ちゃん、可愛いっ……ふふっ……」

今度はケラケラと笑いだすふたりに、ますますわからなくなってくる。
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