私と恋をはじめませんか
結衣ちゃんの爆弾発言に落ち込む松嶋くんに、兄さんがそっと、ビールを差し出していた。





「合コンかぁ……」

飲み会から帰って、私は部屋のベッドに寝転がる。

結衣ちゃんじゃないけど、私も別に彼氏が欲しいわけではなくて、今はただ、篠田さんのことが好きなだけ。

でも、その篠田さんに振り向いてもらえる可能性が感じられなくて、落ち込んでいるだけだから、合コンにまで行く必要はないんじゃないかなあって思っている。

『他の人と会ってもやっぱり今の人のことを想うようだったら、気持ちをぶつけたほうがいいだろうし、それがつらいんだったら、私は次の恋に走ってもいいと思ってるの』

きょんちゃんの言った言葉が脳裏に浮かび、小さなため息が口からこぼれた。

そう。思いきって篠田さんに想いをぶつけるか、可能性がないからあきらめて、次の恋に走るか。

「頭ではわかっているけど、簡単に気持ちは切り替わらないよ」

寝返りを打つと、床に置いたカバンからはみ出るスマホが点灯していた。

ノソノソと起き上がりスマホを手に取ると、さっきまで一緒だったきょんちゃんからのメッセージが表示されていた。

『急だけど、明日空いてる? 用事なかったら、ホテルのランチビュッフェに行かない?』

『小春の話も、ちゃんと聞きたいし』

面倒見のいいきょんちゃんらしい。きっと、私が落ち込んでいるのを気にして、こうして連絡をくれたんだ。

きょんちゃんの優しさに心が温かくなる。

『大丈夫だよ』

そう返事を返し、私は眠りについた。





明けて、翌日。

お気に入りの花柄のフレアワンピースに身を包んだ私は、約束した駅前の大きなシティホテルのロビーできょんちゃんを待っていた。

「小春、お待たせ~」

私を見つけたきょんちゃんが、手を振ってこっちへ向かってくる。

私も手を振っていると、きょんちゃんの横に意外な人物を見つけた。

「結衣ちゃん、どうしたの?」

「きょんちゃんに誘われて、私も来ちゃった」

「今日、図書館行くって言ってなかったっけ?」
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