私と恋をはじめませんか
三人でおしゃべりしながらお店に入り、案内された部屋に行くと、すでに男性陣が座っていて、そのうちのひとりがきょんちゃんを見て片手をあげた。

「一番右側が、私の彼氏」

きょんちゃんが耳元でささやいて、小さく手をあげる。

「ごめんね。待った?」

「いや。俺たちも今来たとこ」

そう言って、きょんちゃんの彼氏さんが私たちにメニュー表を差し出してくれる。

「ありがとうございます」

先輩とふたり、お礼を言い、おしぼりを持ってきてくれた店員さんにドリンクをオーダーする。

ドリンクが運ばれて乾杯すると、それぞれ自己紹介を行って、合コンが始まった。

きょんちゃんの彼氏さんは銀行員で、一緒に来ていた男性ふたりも同じ銀行に勤める同僚らしい。

そのうちのひとり、とても明るいムードメーカー的な男性はきょんちゃんの先輩ととても話が合うようで、開始早々楽しそうに会話を繰り広げている。

私の前には春田さんという二十六歳の男性が座り、私の相手をしてくれていた。

見るからに優しそうな二重の瞳に、物腰の柔らかい口調の春田さんは、どうやら聞き上手らしく、私やきょんちゃんの会話に時々相槌を打ちながら、ニコニコと話を聞いてくれる。

きっと、春田さんのような男性を恋人にしたら幸せなんだろうな。

間違いなく彼女のことを大切にしてくれそうだし、篠田さんのように分かりにくい淡々とした態度も取るなんてことしないはず。

「どうしたの? 小春ちゃん」

春田さんに言われ、ハッと我に返る。

「……なんでもありません」

「そう?」

私ってば、最低だ。

ここへきて、また篠田さんのことを考えてる。

「ほら、小春の好きなアボカドコロッケきたよ」

きょんちゃんの明るい声に、私はぎごちない笑顔を向けた。





二時間の合コンを終え、私たちは店の前に出る。

すっかり意気投合した様子のきょんちゃんの先輩カップルは、ふたり仲良く次の店へと歩いて行った。

残された私に、きょんちゃんが声を掛けてくれる。

「小春どうする? もう一軒行く?」
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