私と恋をはじめませんか
前向きになっていく私の気持ちが表面に溢れていたのか、春田さんが満足そうにうなずく。

「よし、小春ちゃん、ちょっとは前向きになったかな?」

「はい。春田さんのおかげです」

「僕は何もしてないよ。大事なのは、小春ちゃんがしっかり自分の気持ちを告げることなんだからね」

「はい。ありがとうございます」

「なんか小春ちゃんと話してたら、僕も彼女に会いたくなったなあ」

視界に駅をとらえた頃、春田さんが独り言のようにポツリとつぶやいた。

「今から会いに行こうかな。小春ちゃんの様子も報告したいし」

そうだった。春田さんの彼女も、まだ見ぬ私に対してとても親身になってくれていたんだった。

私は思わず春田さんの腕をつかむ。

「春田さん。彼女さんは、甘いものお好きですか?」

「うん。結構何でも食べるけど?」

「ちょ、ちょっと待っててくださいね!」

そう言って、私は駅の横にあるコンビニに駆け込んだ。

シュークリームにプリン。レアチーズケーキに塩大福。みたらし団子も美味しそう。

和風も洋風もごちゃまぜにして、とにかくスイーツを買い込む。

そして、そのコンビニ袋を春田さんへ差し出した。

「これ、ふたりで食べてください。今日のお礼です!」

春田さんは面食らったように目を丸くする。

「でもこんなにたくさんもらっちゃ悪いよ」

「いえ。私の為に今日来てくれて、彼女さんだってきっと嫌だって思ってたはずなのに、許してくれて。私、こんなことくらいしか出来ないけど、でもどうしても何かしたいんです!」

「じゃあ、せっかくの小春ちゃんの気持ち、受け取るね。ありがとう。後でふたりで食べるよ」

「春田さん。今日は本当にありがとうございました。私、頑張ります」

「うん。いい報告を期待してるよ」

私が押し付けたコンビニ袋を顔の斜め上にあげ、春田さんは笑顔で構内に入っていった。

私も構内に入るため、カバンの中のICカードを取り出そうと視線を落としたとき、「高原さん」と私を呼ぶ声が聞こえてきた。

見上げると、そこには今、私が一番会いたかった人。

篠田さんが立っていた。
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