私と恋をはじめませんか
有村さんが送ってくれた地図を頼りにお店へと向かうと、お店の前で有村さんともうひとり、くっきりした二重の瞳と、キリッとした眉が印象的な、キレイな女の人が並んでいた。

「あ、来た来た。小春ちゃん、こっちこっち」

「お疲れ様です」

ヒラヒラと手を振る有村さんに近寄っていく。

「今日はごめんね、突然呼び出して」

「いいえ、大丈夫です」

有村さんは笑顔を向けると、隣にいた女性の肩を引き寄せた。

「ちょっと、やめてよ」

嫌がっている彼女の顔は見えてるだろうに、有村さんは気にせずニコニコを話を続けていく。

「あ、こっちは崎坂芽衣。商品開発部の研究チームにいる同期なんだ」

「初めまして、崎坂です」

「初めまして、高原です」

お互いに、頭を下げて自己紹介。

「んで、俺の彼女」

「え? 彼女?」

「有村っ!」

私が目をまんまるくさせたのと同時、崎坂さんの勢いあるツッコミがスパーン、と有村さんの頭にヒットした。

「痛ってぇ」

「もう、社内の人には秘密にしててって言ってるじゃない」

「いいじゃん。小春ちゃんは言いふらす子じゃないよ。な?」

「え? は、はいっ」
わけもわからず元気に返事をする私を見て、崎坂さんが照れくさそうに微笑む。

「ごめんね。そういうわけだから、誰にも言わないでいてくれるとうれしいな」

その言葉に、私はもう一度大きくうなずいた。

「店の前で立ち話もなんだし、入ろっか」

有村さんの声に、三人で店ののれんをくぐると、中からお肉の焼けるいい匂いが香ってきた。

「ここの焼鳥すっげー美味いから。小春ちゃんにも食べさせてやりたくてさ」

「やったあ。私、焼鳥大好きなんです」

思わず両手でガッツポーズを決める私を見て、ふたりが顔を見合わせる。

「よかったね、お店選び間違えなくて」

「うん、安心したー」
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