ぷりけつヒーロー 尻は地球を救う 第2話
その頃、研究所では晋助たちがモニター越しに凜太郎を見守っていた。踵を返し、転送装置のある部屋へと向かおうとする照子。
「照子!どこへ行く気じゃ!!」
晋助が呼び止める。足を止める照子。
「決まってるじゃないですか!!凜太郎を助けに行くんです!」
「だったら俺も行くぜ!ここでただ見てるだけだなんてゴメンだ!!」
立ち上がり、照子に同行どうこうしようとする敏也。
「ならん!!今凜太郎くんを助けに行くことは断だんじてワシが許さん!!」
晋助の怒号どごうが研究所内に響き渡る。
「なぜですか!?所長!!」
「そうだぜ!このままじゃ凜太郎がやられちまうじゃねぇか!!所長は凜太郎がどうなってもいいってのかよ!!」
「ワシもできることなら助けてやりたいわい!!じゃが、あの怪人はぷりけつビームでも貫つらぬけん盾を持っておる。それに、明らかにあの怪人は前回の怪人よりも遥はるかに強い。今おぬしらが行ったところで結果は目に見えておる。あの戦闘機の二の舞まいになるだけじゃ!みすみす若い命を散ちらせるわけにはいかん。ここは凜太郎くんの力を信じて待つのじゃ」
所長に続いて万次郎も静かに口を開く。
「俺も所長の意見に賛成さんせいだ。お前ら、少しは冷静になれ。今お前ら程度の奴らが行ったところで足手まといになるだけだ」
再び万次郎の胸倉を掴む敏也。
「そんなもんやってみなきゃ分からねぇじゃねぇか!!」
「やって失敗してからでは遅おそいから言ってるんだ!!少しはそのない頭で考えてから行動したらどうなんだ!クソチビ!!」
「もう我慢がまんできねぇ!!一発殴ってやらなきゃ気がすまねぇ!このクソ眼鏡が!!」
「いいだろう!相手になってやる!!」
取っ組み合いの喧嘩を始める敏也と万次郎。それを照子が止める。
「いい加減にしなさい!あんたたち!!今は仲間内で喧嘩してる場合じゃないでしょ!!万次郎、あなたまでなにやってるの!敏也、ここは所長に従したがいましょう」
「でもよ……!」
「所長と万次郎は私たちのことを想って言ってくれてるのよ。それが分からないあなたじゃないでしょ?」
「チッ……。分かったよ。ここで大人しくしてりゃいいんだろ」
「チビにしては聞き分けがいいな」
「チビは関係ねぇだろ!」
「みんな、辛いとは思うがここは堪えてくれ。ワシらはワシらの今できることをやろう」
「はい!!」
晋助の言葉に同時に返事をする三人。そして、それぞれの持ち場へと戻った。
「凜太郎くん。ワシは信じておるぞ!おぬしの底力を。おぬしの力はこんなものではないはずじゃ。そうじゃろ?凜太郎くん……」
勝利を願うようにモニターを見つめる晋助。その視線の先にはモニターの向こうで必死に怪人デカシリの攻撃に耐える凜太郎の姿があった――。
「最初の勢いはどこいっちゃったのかな?それとも達者たっしゃなのは口と"アソコ"だけなのかなぁ?」
怪人デカシリの前でうつ伏せの状態で倒れている凜太郎。見下ろし、悪戯っぽく笑う怪人デカシリ。凜太郎はなんとか立ち上がろうとしていた。
「バカに……するなぁ!!」
力を振り絞しぼり、怪人デカシリの腹部めがけて体当たりをする凜太郎。油断していた怪人デカシリはかわすこともできず、直撃をくらい後ろに吹き飛ぶ。同時に凜太郎も体勢を崩してしまう。
「まだこんな力が残ってたなんて……!ちょっと油断しちゃった」
ゆっくり立ち上がろうとしている怪人デカシリ。凜太郎はその隙に体勢を整えようとしている。
その時。凜太郎の近くで建物が崩れ、瓦礫がれきが地面へと落下していく。その真下には小学校低学年くらいの小さな女の子が恐怖で震ふるえて動けずにいる。それに気づいた凜太郎は女の子を自身の手で覆おおい、間一髪のところでかばう。凜太郎の手の甲こうの上に瓦礫が降ふり注そそいだ。
「大丈夫かい?」
「ありがとう!大きいお兄ちゃん。お兄ちゃんもいっぱい怪我けがしてるけど……大丈夫?」
「お兄ちゃんは大丈夫だから。今のうちに逃げるんだ。いいね?」
「うん!ありがとう!!あっ、そうだ。お兄ちゃんにこれあげる!」
女の子はスカートのポケットから一枚の絆創膏ばんそうこうを取り出すと、小さな手で凜太郎に手渡した。
「お兄ちゃん!負けないでね!!」
そう言い残すと、女の子は走り去って行った。凜太郎は女の子から貰もらった絆創膏を強く握にぎり締しめた。
体勢を戻し、怪人デカシリが吹き飛んだ方を確認すると、そこに怪人デカシリの姿はなかった。慌あわてて辺りを見渡す凜太郎。すると、女の子が走っていった方に怪人デカシリの姿があることに気づく。凜太郎が女の子に気をとられている間に回まわり込んだのだろう。
「まずい!!」
凜太郎が女の子を助けにいこうとした次の瞬間。怪人デカシリの大きな足が振り下ろされ、辺りに轟音が鳴り響いた。怪人デカシリの足の裏には小さな赤い血のようなものがついている。その下にはまるでプレス機にでも潰されたかのような先程さきほどの女の子の見るも無残な姿が転がっていた。
「私が見逃みのがすとでも思った?残念でした~」
頭が真っ白になる凜太郎。脳裏のうりに女の子の言葉が甦よみがえってくる。心の奥底から怒りの感情が沸々ふつふつと沸わき上がる。
「なぜだ……なぜ殺した!!その女の子は関係なかったはずだ!!」
「ここは戦場よ。戦場に男も女も、大人も子供も関係ないよ。私は強くて、この子は私より弱かった。ただそれだけの話だよ。ていうか、足汚れちゃったぁ。最悪~」
凜太郎の中でなにかが切れた。
「お前だけは……お前だけは絶対に許さない!!」
凜太郎の身体全体が白く輝き出す。
「な、なに!?なんなの!?」
怪人デカシリの方に尻を突き出し、ぷりけつビームの体勢に入る凜太郎。
「またあのビーム?何度撃ったって無駄だよ。それに、まだ15分経たってないんじゃない?そのビームは一度撃ったら15分間は撃てないんでしょ?知ってるんだから。万が一、撃てたとしてもこの盾がある限り私にそのビームは効かないんだから!そしたら君はエネルギー切れで私のお尻でぺちゃんこにされてゲームオーバーだよ!さぁ!!撃てるものなら撃ってみなさいよ!!」
ぷりけつビームを防いだ紫色に輝く盾を構える怪人デカシリ。
――奇跡きせきでもなんでもいい!!俺にこいつを倒す力を、力をくれ!!
「この一発に全てをかける!!必殺!!ぷりけつビィィィーム!!」
凜太郎のお尻から渾身のぷりけつビームが放たれる。ぷりけつビームは真っ直ぐ怪人デカシリへと向かっていく。怪人デカシリはそれを盾で受け止めた。
「そんな!!まだ15分経ってないはずなのに!!それに最初の時より威力が段違いに、強い……!」
徐々に盾にヒビが入り始める。
「嘘!?盾にヒビが……!こんなのなにかの間違いだよ!!」
「うおぉぉぉー!!貫けえぇぇぇー!!」
お尻に渾身の力を込め、残りの全エネルギーを注ぐ凜太郎。怪人デカシリはビームをなんとか押し返そうと試こころみているが、明らかに押されている。
「こんな奴にやられるなんて……!そんなの、そんなの……イヤアァァァー!!」
ついに盾を貫き、ぷりけつビームが直撃し、凄すさまじい爆音と共に怪人デカシリはその悪あしき命を散らした。盾は砕くだけ散り、光の粉となって消え去った。
「や、やった……!仇かたきは……とった……よ……」
力を使い果たした凜太郎はその場で倒れ、気を失ってしまう。変身が強制的に解除かいじょされ、元の大きさへと戻っていく。その手には一枚の絆創膏がしっかりと握られ、満足気な表情を浮かべていた。
その様子を研究所のモニター越しに見ていた晋助、敏也、万次郎は勝利の喜びを分かち合っていた。ただ一人、照子が心配そうにモニターの向こうにいる凜太郎を心配そうに見つめている。
「さすがはワシが見込んだぷりけつじゃ!最後の最後でやってくれたのう!!」
「まったくヒヤヒヤさせやがるぜ!!あいつは!」
「勝ったのは喜ばしいことだが、最後のあの力は一体なんだったんだ?身体全体が白く光ったように見えたが……」
「恐らく凜太郎くんの怒りがエネルギーとなって力を与え、奥底に眠る潜在能力せんざいのうりょくを引き出したのじゃろう。凜太郎くん自身、無意識にやったことじゃからまだコントロールはできておらんじゃろうが」
「所長!凜太郎の回収を!!早く手当てあてしてあげないと……」
「おぉ、そうじゃったな。総員!逆転送準備開始じゃ!!」
「はい!!」
三人は晋助の指示に従い、早速逆転送の準備へと取り掛かった。
こうしてヘンテコな一人のヒーローの手によってこの国は、この星はまた守られた。
怪人デカシリがやられた、という知らせは偵察班の手により、すぐに敵側にも報告された。
地球から一万光年いちまんこうねんほど離れた宇宙を漂う謎の宇宙船。そこの第一艦橋だいいちかんきょうの艦長席に座る一人の男が偵察班からの報告をモニター越しに受け取っている。
「――というわけで、デカシリもぷりけつヒーローと名乗る者に敗れ……盾も、その……粉々になってしまったみたいで……」
「もういい!そんな報告聞きたくもないわ!!下がれ!!」
苛立いらだちを隠しきれない艦長らしき男。
「ええい!!地球人一人になにを手こずっておるのだ!!」
「苦戦くせんしているようですね、艦長殿」
そこに音もなく近づく黒いフードをかぶった不気味な女。
「あぁ、貴様きさまか。何用だ。私を笑いにでもきたのか?」
「滅相めっそうもございません。もし苦戦しているようであれば微力びりょくながらお力をお貸ししようと思ったまでにございます」
「何か良き策でもあるのか?」
「はい。私にとっておきの策がございます」
「ほう。では、貴様に任せるとしよう。今度こそあの憎にくき地球人を根絶ねだやしにするのだ!よいな。参謀長さんぼうちょう」
「御意ぎょい」
不気味な笑みを浮かべ、その場から消えるように去る参謀長の女。
「次こそ必ずや仕留しとめてくれる!首を洗って待っていろ!!ぷりけつヒーロー!!そして地球を我が手に……!」
一難去いちなんさってまた一難。次の刺客しきゃくが凜太郎たちのすぐそこまで迫っていた。ヒーローに安息あんそくの時はない。
負けるな、ぷりけつヒーロー。頑張がんばれ、ぷりけつヒーロー。地球の平和を掴つかみとる、その日まで――。
「照子!どこへ行く気じゃ!!」
晋助が呼び止める。足を止める照子。
「決まってるじゃないですか!!凜太郎を助けに行くんです!」
「だったら俺も行くぜ!ここでただ見てるだけだなんてゴメンだ!!」
立ち上がり、照子に同行どうこうしようとする敏也。
「ならん!!今凜太郎くんを助けに行くことは断だんじてワシが許さん!!」
晋助の怒号どごうが研究所内に響き渡る。
「なぜですか!?所長!!」
「そうだぜ!このままじゃ凜太郎がやられちまうじゃねぇか!!所長は凜太郎がどうなってもいいってのかよ!!」
「ワシもできることなら助けてやりたいわい!!じゃが、あの怪人はぷりけつビームでも貫つらぬけん盾を持っておる。それに、明らかにあの怪人は前回の怪人よりも遥はるかに強い。今おぬしらが行ったところで結果は目に見えておる。あの戦闘機の二の舞まいになるだけじゃ!みすみす若い命を散ちらせるわけにはいかん。ここは凜太郎くんの力を信じて待つのじゃ」
所長に続いて万次郎も静かに口を開く。
「俺も所長の意見に賛成さんせいだ。お前ら、少しは冷静になれ。今お前ら程度の奴らが行ったところで足手まといになるだけだ」
再び万次郎の胸倉を掴む敏也。
「そんなもんやってみなきゃ分からねぇじゃねぇか!!」
「やって失敗してからでは遅おそいから言ってるんだ!!少しはそのない頭で考えてから行動したらどうなんだ!クソチビ!!」
「もう我慢がまんできねぇ!!一発殴ってやらなきゃ気がすまねぇ!このクソ眼鏡が!!」
「いいだろう!相手になってやる!!」
取っ組み合いの喧嘩を始める敏也と万次郎。それを照子が止める。
「いい加減にしなさい!あんたたち!!今は仲間内で喧嘩してる場合じゃないでしょ!!万次郎、あなたまでなにやってるの!敏也、ここは所長に従したがいましょう」
「でもよ……!」
「所長と万次郎は私たちのことを想って言ってくれてるのよ。それが分からないあなたじゃないでしょ?」
「チッ……。分かったよ。ここで大人しくしてりゃいいんだろ」
「チビにしては聞き分けがいいな」
「チビは関係ねぇだろ!」
「みんな、辛いとは思うがここは堪えてくれ。ワシらはワシらの今できることをやろう」
「はい!!」
晋助の言葉に同時に返事をする三人。そして、それぞれの持ち場へと戻った。
「凜太郎くん。ワシは信じておるぞ!おぬしの底力を。おぬしの力はこんなものではないはずじゃ。そうじゃろ?凜太郎くん……」
勝利を願うようにモニターを見つめる晋助。その視線の先にはモニターの向こうで必死に怪人デカシリの攻撃に耐える凜太郎の姿があった――。
「最初の勢いはどこいっちゃったのかな?それとも達者たっしゃなのは口と"アソコ"だけなのかなぁ?」
怪人デカシリの前でうつ伏せの状態で倒れている凜太郎。見下ろし、悪戯っぽく笑う怪人デカシリ。凜太郎はなんとか立ち上がろうとしていた。
「バカに……するなぁ!!」
力を振り絞しぼり、怪人デカシリの腹部めがけて体当たりをする凜太郎。油断していた怪人デカシリはかわすこともできず、直撃をくらい後ろに吹き飛ぶ。同時に凜太郎も体勢を崩してしまう。
「まだこんな力が残ってたなんて……!ちょっと油断しちゃった」
ゆっくり立ち上がろうとしている怪人デカシリ。凜太郎はその隙に体勢を整えようとしている。
その時。凜太郎の近くで建物が崩れ、瓦礫がれきが地面へと落下していく。その真下には小学校低学年くらいの小さな女の子が恐怖で震ふるえて動けずにいる。それに気づいた凜太郎は女の子を自身の手で覆おおい、間一髪のところでかばう。凜太郎の手の甲こうの上に瓦礫が降ふり注そそいだ。
「大丈夫かい?」
「ありがとう!大きいお兄ちゃん。お兄ちゃんもいっぱい怪我けがしてるけど……大丈夫?」
「お兄ちゃんは大丈夫だから。今のうちに逃げるんだ。いいね?」
「うん!ありがとう!!あっ、そうだ。お兄ちゃんにこれあげる!」
女の子はスカートのポケットから一枚の絆創膏ばんそうこうを取り出すと、小さな手で凜太郎に手渡した。
「お兄ちゃん!負けないでね!!」
そう言い残すと、女の子は走り去って行った。凜太郎は女の子から貰もらった絆創膏を強く握にぎり締しめた。
体勢を戻し、怪人デカシリが吹き飛んだ方を確認すると、そこに怪人デカシリの姿はなかった。慌あわてて辺りを見渡す凜太郎。すると、女の子が走っていった方に怪人デカシリの姿があることに気づく。凜太郎が女の子に気をとられている間に回まわり込んだのだろう。
「まずい!!」
凜太郎が女の子を助けにいこうとした次の瞬間。怪人デカシリの大きな足が振り下ろされ、辺りに轟音が鳴り響いた。怪人デカシリの足の裏には小さな赤い血のようなものがついている。その下にはまるでプレス機にでも潰されたかのような先程さきほどの女の子の見るも無残な姿が転がっていた。
「私が見逃みのがすとでも思った?残念でした~」
頭が真っ白になる凜太郎。脳裏のうりに女の子の言葉が甦よみがえってくる。心の奥底から怒りの感情が沸々ふつふつと沸わき上がる。
「なぜだ……なぜ殺した!!その女の子は関係なかったはずだ!!」
「ここは戦場よ。戦場に男も女も、大人も子供も関係ないよ。私は強くて、この子は私より弱かった。ただそれだけの話だよ。ていうか、足汚れちゃったぁ。最悪~」
凜太郎の中でなにかが切れた。
「お前だけは……お前だけは絶対に許さない!!」
凜太郎の身体全体が白く輝き出す。
「な、なに!?なんなの!?」
怪人デカシリの方に尻を突き出し、ぷりけつビームの体勢に入る凜太郎。
「またあのビーム?何度撃ったって無駄だよ。それに、まだ15分経たってないんじゃない?そのビームは一度撃ったら15分間は撃てないんでしょ?知ってるんだから。万が一、撃てたとしてもこの盾がある限り私にそのビームは効かないんだから!そしたら君はエネルギー切れで私のお尻でぺちゃんこにされてゲームオーバーだよ!さぁ!!撃てるものなら撃ってみなさいよ!!」
ぷりけつビームを防いだ紫色に輝く盾を構える怪人デカシリ。
――奇跡きせきでもなんでもいい!!俺にこいつを倒す力を、力をくれ!!
「この一発に全てをかける!!必殺!!ぷりけつビィィィーム!!」
凜太郎のお尻から渾身のぷりけつビームが放たれる。ぷりけつビームは真っ直ぐ怪人デカシリへと向かっていく。怪人デカシリはそれを盾で受け止めた。
「そんな!!まだ15分経ってないはずなのに!!それに最初の時より威力が段違いに、強い……!」
徐々に盾にヒビが入り始める。
「嘘!?盾にヒビが……!こんなのなにかの間違いだよ!!」
「うおぉぉぉー!!貫けえぇぇぇー!!」
お尻に渾身の力を込め、残りの全エネルギーを注ぐ凜太郎。怪人デカシリはビームをなんとか押し返そうと試こころみているが、明らかに押されている。
「こんな奴にやられるなんて……!そんなの、そんなの……イヤアァァァー!!」
ついに盾を貫き、ぷりけつビームが直撃し、凄すさまじい爆音と共に怪人デカシリはその悪あしき命を散らした。盾は砕くだけ散り、光の粉となって消え去った。
「や、やった……!仇かたきは……とった……よ……」
力を使い果たした凜太郎はその場で倒れ、気を失ってしまう。変身が強制的に解除かいじょされ、元の大きさへと戻っていく。その手には一枚の絆創膏がしっかりと握られ、満足気な表情を浮かべていた。
その様子を研究所のモニター越しに見ていた晋助、敏也、万次郎は勝利の喜びを分かち合っていた。ただ一人、照子が心配そうにモニターの向こうにいる凜太郎を心配そうに見つめている。
「さすがはワシが見込んだぷりけつじゃ!最後の最後でやってくれたのう!!」
「まったくヒヤヒヤさせやがるぜ!!あいつは!」
「勝ったのは喜ばしいことだが、最後のあの力は一体なんだったんだ?身体全体が白く光ったように見えたが……」
「恐らく凜太郎くんの怒りがエネルギーとなって力を与え、奥底に眠る潜在能力せんざいのうりょくを引き出したのじゃろう。凜太郎くん自身、無意識にやったことじゃからまだコントロールはできておらんじゃろうが」
「所長!凜太郎の回収を!!早く手当てあてしてあげないと……」
「おぉ、そうじゃったな。総員!逆転送準備開始じゃ!!」
「はい!!」
三人は晋助の指示に従い、早速逆転送の準備へと取り掛かった。
こうしてヘンテコな一人のヒーローの手によってこの国は、この星はまた守られた。
怪人デカシリがやられた、という知らせは偵察班の手により、すぐに敵側にも報告された。
地球から一万光年いちまんこうねんほど離れた宇宙を漂う謎の宇宙船。そこの第一艦橋だいいちかんきょうの艦長席に座る一人の男が偵察班からの報告をモニター越しに受け取っている。
「――というわけで、デカシリもぷりけつヒーローと名乗る者に敗れ……盾も、その……粉々になってしまったみたいで……」
「もういい!そんな報告聞きたくもないわ!!下がれ!!」
苛立いらだちを隠しきれない艦長らしき男。
「ええい!!地球人一人になにを手こずっておるのだ!!」
「苦戦くせんしているようですね、艦長殿」
そこに音もなく近づく黒いフードをかぶった不気味な女。
「あぁ、貴様きさまか。何用だ。私を笑いにでもきたのか?」
「滅相めっそうもございません。もし苦戦しているようであれば微力びりょくながらお力をお貸ししようと思ったまでにございます」
「何か良き策でもあるのか?」
「はい。私にとっておきの策がございます」
「ほう。では、貴様に任せるとしよう。今度こそあの憎にくき地球人を根絶ねだやしにするのだ!よいな。参謀長さんぼうちょう」
「御意ぎょい」
不気味な笑みを浮かべ、その場から消えるように去る参謀長の女。
「次こそ必ずや仕留しとめてくれる!首を洗って待っていろ!!ぷりけつヒーロー!!そして地球を我が手に……!」
一難去いちなんさってまた一難。次の刺客しきゃくが凜太郎たちのすぐそこまで迫っていた。ヒーローに安息あんそくの時はない。
負けるな、ぷりけつヒーロー。頑張がんばれ、ぷりけつヒーロー。地球の平和を掴つかみとる、その日まで――。