クールな彼のワケあり子育て事情～新米パパは甘々な愛妻家でした～
抱きしめられたと言ったほうが近いかもしれない。というか抱きしめられた。

私を抱えてエレベーターの外に飛び出た有馬さんは、けれど一歩間に合わず、すり抜けざまに肩をドアに打ちつけ、ガガンと音を立てた。

「いって」と呻く彼の後ろで、もうあなたがたの相手なんてしていられません、とばかりに扉を閉ざしたエレベーターが、しれっと下りていく。


「ってえ…、なんでああエレベーターって、本気でかかってくんのかな…」


有馬さんが肩を手で押さえて、恨めしそうにそれを振り返った。

一瞬だけ、私を包み込むように抱きかかえた胸。温かくて、頼もしくて、ノースリーブの私の腕に、彼の腕の内側が直接触れた。

彼が、顔をこちらに戻すのをためらっていることに気づいた。半端に横を向いたまま、ぎゅっと口を引き結んでいる。


「…私、関係ありませんか」


その視線が、下に落ちた。


「興味本位のつもりもないです。でも知りたいんです。聞かせてほしいんです」


自身の右肩を掴んでいた左手に、力がこもったのがわかる。

その左腕に、私はそうっと手をかけた。触れた瞬間、向こうがびくっと反応した。


「私は、関係ないですか」


不本意そうに、わずかに眉根を寄せて。

彼がかすかに首を振った。

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