クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
え?

きょとんとした私に、苛立ったように有馬さんが、手で私の全身を指した。


「そんな…きれいな格好で会うような相手が、いるんじゃないですか」

「えっ…」


私はつい、自分の恰好を見下ろした。

ベージュとネイビーのツートンのワンピース。すとんとしたシンプルなラインだし、二次会からの参加ということで髪もそんなに派手にしてはいない。でも美容院でセットしてもらったし、一応これだってパーティドレスだ。

相手ってなに、まさか穂高くんのこと?


「これは、結婚式の二次会の帰りだからで、えっと、さっきいたのは、偶然帰りが一緒になった、高校の同級生です」

「え」


今度は有馬さんのほうがきょとんとした。

入れ替わりに私のほうにむくむくと、腹立ちが込み上げてくる。


「デートスタイルだとでも思ったんですか? よく見てくださいよ、どう考えたってパーティ仕様でしょう!」

「知らないですよ、女の人の服装なんて、たいした違いわからないし…」

「わからないんなら、勝手な思い込みで決めつけないで!」


彼が叱られた子供みたいに、むっとむくれた顔をする。


「しょうがないでしょ、俺は単に、いつもと違ってすごい、きれいだなって思っただけで」

「すみませんね、いつもは小汚くて」

「そういう意味じゃないの、わかってるでしょ…」


ふてくされた声は、だんだんと小さくなり、有馬さんはそっぽを向いてしまった。

そんな態度を見せられると、私も怒りの矛先を失い、戸惑ってしまう。


「…ただの同級生って、本当ですか」


有馬さんの視線が、探るようにこちらを見る。

どうしてそっちがそんな怒った顔をしているのよ、こっちでしょう。お腹の中ではそんな威勢のいいことを考えながらも、私の手はそわそわとバッグをいじり、顔はじわじわ熱くなってきていた。
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