クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
お父さんは宙を見つめて、「あー…」とぼんやりした理解を示した。

まさか、本当に無職だったりするんじゃ。


「そっか、そうですね」

「じゃあ私、これで失礼します」

「あの、ありがとうございました、家まで」

「いえ」


観察ついでです、とも言えず首を振る。


「先生、いくつですか?」


突然、思い立ったようにお父さんが聞いてきたので、私は呆気に取られた。


「えっ?」

「いや、先生とかって、なんかもっと上なのかなと思ってたんで。今日行ったら、案外みんな、若いんでびっくりして」


いったいどこを見ているのよ。というより、息子を三年以上も預けているのに、保育園に来たの、本当に今日が初めてだったのか。


「若い人は多いですよ、私はもう、あの中では上のほうです、29なので」

「へえ、俺とタメだ」


ぽかんとしてしまった。

彼が笑ったからだ。それも人懐こい、屈託のない笑顔で。


「いや、ひとつ下かな、俺は今年、30なんで」

「あ、じゃあ…私のほうが下ですね」

「でも近いですね」


にこっと嬉しそうにする。

ちょっと、なんなのいきなり。反則だ、そんなの。

そのとき彼のポケットで携帯が鳴った。


「あ、母です」


律儀に出る前に教えてくれる。
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