クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
律己くんもきっと、お父さんの様子がどこか変なことに気づいている。

だけど力を貸せるわけないこともわかっているから、自分は自分で、しっかりしようと気持ちを固めている。

有馬さんと一緒にいたいよね、律己くん。

あの人が、律己くんのお父さんだもんね。

お父さん、そのことに気がついてくれるといいね。


* * *


10月も終わりに近づいた、ある金曜日の夜、ベッドの上でごろごろと週末の始まりを過ごしてしていたら、枕元の携帯が震えた。


【候補日決まったよ】


穂高くんからだった。

三つの日付と、【NGあったら教えて】というメッセージ。私は少し考え、【ごめんね、今回はやめておく】と返信した。

すぐに既読になり、【OK】と返ってくる。それに返事をするより先に、またメッセージが来た。


【彼氏でもできた?】


ドキッとした。一瞬で頬が火照った。

ええと、と悩みながら、何度も書いたり消したりして返信の文句を作る。


【それはまだなんだけど】

【もう少しで彼氏になりそうな感じ?】


そこ掘り下げるの。

私は困り、また必死で返信を考えた。


【わからない…】

【倉田に会いたかったんだけど、残念】

【ごめんね、誘ってくれてありがとう】

【いいよ、またな】


ふうー、とため息が出た。電話じゃなくてよかった。電話だったら私は、こんなに気の利いたやりとりをできた自信がない。

申し訳なさと、やっぱり行かなくて正解だったのだという思いに挟まれながら携帯を眺めていたら、それがまた震えたのでびくっとした。

090から始まる、登録していない番号。

まさか穂高くんのわけは…と思いつつ、画面の応答ボタンをスライドさせる。


「はい」

『あ、エリカ先生ですか、俺です』
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