クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
やめといたほうがいいですね、とさらっと撤回され、かちんと来た。
「自分だって文化系のくせに!」
「俺はあいにく、やったらできるんで。嫌いなだけで」
ぐっ…そうだった…。
押し黙った私を、有馬さんがちらっと見る。「まあでも」と楽しそうに彼が言った。
「今日は、屋外ですよね」
その視線を追って、前方を見た。
フロントガラスを白く輝かせる陽光。広がる高い空。開けた窓から流れ込んでくる空気は、いつの間にかもうすっかり乾いた秋の匂いだ。
外で過ごすのに、こんなに素敵な日があるだろうか。
「ですね」
「じゃあ、海のほうへ行って、公園でも」
「はい」
気持ちよさそうなプランと、とにかくなにかが進んでほっとしたのもあって思わず笑みがこぼれた。
そんな私を見て、有馬さんもにこっと笑い、高速のインターの表示に合わせて、車を左折させた。
「笑いすぎじゃないですか?」
「笑ってないですよ」
嘘つかないでよ。
「感動してるんです」と言いながらまた、有馬さんが吹き出す。
一時間ほど車を走らせて到着した海辺の公園で、家族連れやカップルに紛れて、芝の土手でお弁当を広げた。律己くんに振る舞う気満々だった私は、量こそたっぷりなものの、メニューや飾りつけは、完璧に小さな子供向けのお弁当を作ってしまったのだ。
ゆで卵はニワトリとひよこだし、おにぎりはパンダだし、ウインナーは当然のごとく、タコとカニだ。
卵焼きもハート形、星形に抜いた人参があちこちを彩り、プチトマトとブロッコリーと唐揚げ、というカラフルで簡単にお弁当箱を埋めてくれるおかずたちがひしめいている。
ひとつひとつをピックでつついては眺め、有馬さんはくすくすと笑っている。
「すげえ、先生、器用ですね」
「運動ができない分、取り柄はほかにあるんですよ」
「そうだ、写真撮ろう」
私の惨めな当てこすりを無視して、ジーンズから携帯を取り出した。あれこれ傾けて角度を見つけながら、「あーでも」とふと気づいたように言う。
「律己には見せてやれないなあ」
「どうしてですか?」
「どうしてですかって、先生と会ってるなんて、言ってないですもん」
あっ、そりゃそうか。
「自分だって文化系のくせに!」
「俺はあいにく、やったらできるんで。嫌いなだけで」
ぐっ…そうだった…。
押し黙った私を、有馬さんがちらっと見る。「まあでも」と楽しそうに彼が言った。
「今日は、屋外ですよね」
その視線を追って、前方を見た。
フロントガラスを白く輝かせる陽光。広がる高い空。開けた窓から流れ込んでくる空気は、いつの間にかもうすっかり乾いた秋の匂いだ。
外で過ごすのに、こんなに素敵な日があるだろうか。
「ですね」
「じゃあ、海のほうへ行って、公園でも」
「はい」
気持ちよさそうなプランと、とにかくなにかが進んでほっとしたのもあって思わず笑みがこぼれた。
そんな私を見て、有馬さんもにこっと笑い、高速のインターの表示に合わせて、車を左折させた。
「笑いすぎじゃないですか?」
「笑ってないですよ」
嘘つかないでよ。
「感動してるんです」と言いながらまた、有馬さんが吹き出す。
一時間ほど車を走らせて到着した海辺の公園で、家族連れやカップルに紛れて、芝の土手でお弁当を広げた。律己くんに振る舞う気満々だった私は、量こそたっぷりなものの、メニューや飾りつけは、完璧に小さな子供向けのお弁当を作ってしまったのだ。
ゆで卵はニワトリとひよこだし、おにぎりはパンダだし、ウインナーは当然のごとく、タコとカニだ。
卵焼きもハート形、星形に抜いた人参があちこちを彩り、プチトマトとブロッコリーと唐揚げ、というカラフルで簡単にお弁当箱を埋めてくれるおかずたちがひしめいている。
ひとつひとつをピックでつついては眺め、有馬さんはくすくすと笑っている。
「すげえ、先生、器用ですね」
「運動ができない分、取り柄はほかにあるんですよ」
「そうだ、写真撮ろう」
私の惨めな当てこすりを無視して、ジーンズから携帯を取り出した。あれこれ傾けて角度を見つけながら、「あーでも」とふと気づいたように言う。
「律己には見せてやれないなあ」
「どうしてですか?」
「どうしてですかって、先生と会ってるなんて、言ってないですもん」
あっ、そりゃそうか。