クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
そう語る友達の横顔を見て、おや、と思った。
なんだ、やっぱり増えるんじゃないか。家っていう全体で見たら、いっぱい増えるんじゃないか。なるほどそうか、そういう増え方もあるんだ。
僕はよくかわいそうと言われる。本当のお母さんを亡くしているからだ。言うのは主に、大人の人だ。
気持ちはありがたいけど、その同情は少し短絡的と言わざるを得ない。確かにきっとすてきな人だっただろうお母さんと長く暮らせなかったのは惜しいし、残念なことだけど、そのおかげで僕には今がある。
かっこよくてたまにどうしようもないお父さんと、優しくてかわいいお母さんと、両方のおじいちゃんおばあちゃんがいて、そのみんなが僕を好き。
ということは、僕を産んだお母さんにも、みんなの"好き"がちょっとずつ、届いているはずなんだ。だってお母さんがいなかったら僕もいなかったわけだから。
好きな漫画があると、それを描いた人のことも好きになるよね? こんなすばらしいものを生み出してくれてありがとうって。それと同じ。
お母さんは天国に行ってからも、そうやって増え続ける愛を受け取っている。
「あっ、やべ、監督もう来てる」
「ほんとだ!」
僕たちは急いで校庭にダッシュし、朝礼台の上にランドセルを放り投げてコースの整備の支度をした。
薄曇りの空は、白い太陽がまぶしくて、そのうち晴れてくるだろうなって気配がする。空気も少しずつ温まってきている。
お父さんとお母さんは、たぶん僕が中学生になったら、もしくは15歳になったら、全部を話そうと考えているに違いない。そのとき僕は、初めて聞いたふりをしようか、全部知っていたと教えてあげようか、まだ決めかねている。
どっちだっていいよね、だってなにも変わらないもの。
僕と卓己と、お父さんとお母さんでひとつの家族。それはそのままだもの。
ねえお母さん?
見上げた空では、返事みたいに太陽がちかっとまたたいた。
愛ってなに?
誰もがその答えを探して、大人まで苦労しているのを知っている。
僕に聞いてくれたら教えてあげるのに。
それはね、あったらあるだけ幸せで、毎日が明るくて黄色とかピンクとか、優しい色に光って、みんなつい笑っちゃうような感じで。
それからね、なかなか信じられないかもしれないんだけど。
なんと、増えるんだよ!
ってね。
おわり
なんだ、やっぱり増えるんじゃないか。家っていう全体で見たら、いっぱい増えるんじゃないか。なるほどそうか、そういう増え方もあるんだ。
僕はよくかわいそうと言われる。本当のお母さんを亡くしているからだ。言うのは主に、大人の人だ。
気持ちはありがたいけど、その同情は少し短絡的と言わざるを得ない。確かにきっとすてきな人だっただろうお母さんと長く暮らせなかったのは惜しいし、残念なことだけど、そのおかげで僕には今がある。
かっこよくてたまにどうしようもないお父さんと、優しくてかわいいお母さんと、両方のおじいちゃんおばあちゃんがいて、そのみんなが僕を好き。
ということは、僕を産んだお母さんにも、みんなの"好き"がちょっとずつ、届いているはずなんだ。だってお母さんがいなかったら僕もいなかったわけだから。
好きな漫画があると、それを描いた人のことも好きになるよね? こんなすばらしいものを生み出してくれてありがとうって。それと同じ。
お母さんは天国に行ってからも、そうやって増え続ける愛を受け取っている。
「あっ、やべ、監督もう来てる」
「ほんとだ!」
僕たちは急いで校庭にダッシュし、朝礼台の上にランドセルを放り投げてコースの整備の支度をした。
薄曇りの空は、白い太陽がまぶしくて、そのうち晴れてくるだろうなって気配がする。空気も少しずつ温まってきている。
お父さんとお母さんは、たぶん僕が中学生になったら、もしくは15歳になったら、全部を話そうと考えているに違いない。そのとき僕は、初めて聞いたふりをしようか、全部知っていたと教えてあげようか、まだ決めかねている。
どっちだっていいよね、だってなにも変わらないもの。
僕と卓己と、お父さんとお母さんでひとつの家族。それはそのままだもの。
ねえお母さん?
見上げた空では、返事みたいに太陽がちかっとまたたいた。
愛ってなに?
誰もがその答えを探して、大人まで苦労しているのを知っている。
僕に聞いてくれたら教えてあげるのに。
それはね、あったらあるだけ幸せで、毎日が明るくて黄色とかピンクとか、優しい色に光って、みんなつい笑っちゃうような感じで。
それからね、なかなか信じられないかもしれないんだけど。
なんと、増えるんだよ!
ってね。
おわり