クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「それもだめ」


意外にも厳然と、お父さんが首を振る。

何度か交渉が行われた結果、ふたりはラムネで合意に至った。

そんな様子を微笑ましく見守りつつ、そっとその場を離れた。

頑張ってくださいね、お父さん。親の教えが人を作るんです。

私たちも毎日、もしかしたらご両親より長い時間、子供たちと過ごしていますが、それでも彼らにとって、親は別格。

悔しいけれど、そうなんです。

あっ。

そうだ!

わたしはふたりを探して、陳列棚の間を猛然とじぐざぐに歩いた。

いた!


「有馬さん!」

「うわ!」


レジの列にいたところを、飛びついて声をかけたら、仰天されてしまった。


「びっくりした、なんですか」

「あの、来月どこかお休みを取れませんか。保育参加というイベントがありまして、保護者の方に、一日保育士をしていただくっていう」

「絶対嫌です」


真顔で即答された。

この人、想像以上に正直だな…。

レジ横のお菓子から律己くんの気をそらしながら、彼は重ねて言う。


「だいたい、保育園って働く親を助けるところでしょ。園の行事のために平日休ませるとかって」

「その声はあります。なので強制ではなく、任意参加なんです」

「そうですか、じゃあ俺は任意不参加で」

「子供が喜ぶんですよ、ママ先生、パパ先生って」
< 20 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop