クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「朝の会が始まるまで、子供たちと遊んでてください」

「…なんか、小さいのもいるんですけど…」


彼が不安そうに保育室を見回す。


「登園の時間帯は慌ただしくて目を離しがちなので、すべての園児を一ヵ所に集めておくんです。一歳児組だけは別の部屋ですが」

「へえ」


動きやすい格好でと伝えた通り、ジャージとTシャツというスタイルだ。いつもカジュアルを通り越してラフなので、印象はあまり変わらない。

彼が柵をまたいで保育エリアに入ると、子供たちがわっと取り囲んだ。


「今日のパパ先生だ!」

「先生、誰のパパ?」

「律己くんだよ、知らないの?」


なすすべもなく手を引かれ、おもちゃのあるほうに引きずられていく。それは誰が見ても不安な風景で、原本先生がフォローしに駆け寄った。




「有馬さん、全部のコップにこれ、ついでください」

「えーと、どれが誰のですか」

「子供たちがわかってますので」

「なるほど」


うなずいて、トレイの上に並べたコップを麦茶で満たしていく。

私は彼があまりになみなみと注ぐので、コップの中ほどを指さした。


「こぼしてしまうので、このへんで」

「あ、はい」


有馬さんはすぐに、コップの中身を半分、別のコップにどぼっと空けた。豪快。

続いて慎重に、私が示した分量を超えないよう三十個ほどのコップに麦茶を入れていく。つい私も息を殺して見守ってしまい、自分の作業を忘れた。
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