クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「給食が終わったらお昼寝です。その間は休んでいただけますから」
「そうですか…」
テーブルに給食を並べながら、彼がほっとした表情をする。
相当くたびれているみたいだ。午前中に行った公園でも、園児たちに足を埋められながら砂場でぼんやりしていた。
律己くんは彼なりに気を使い、お父さんの手間を増やさないよう、いつも以上にちゃんとしている。だけど時折、ほかの子たちがお父さんにせがんで抱っこしてもらったりするのを、羨ましそうに見ていた。
「お父さんは律己くんの隣で食べてあげてください」
「俺もここで食うんですか」
「もちろんです」
彼が、小さな椅子にびっしり子供たちが座った室内を見回す。その顔には、安らがない、と書いてある。
気持ちはわかるけれど、仕方ない。食事中も仕事はあるのだ。
私も有馬さんと同じテーブルにつき、「いただきます」の号令で食べ始めた。
さっさと食べておかわりと叫ぶ子、苦手なものを口に入れたまま飲み込めず、ちっとも進まない子、集中力がなくて立ち上がってしまう子。同じ学年の中でも、子供の食事風景は千差万別だ。
きちんと食べる律己くんしか知らなかったらしいお父さんは、あぜんとしてその様子を見ていた。隣の律己くんを、そっと肘でつつく。
「…いつもこんなやかましい中で食ってんの?」
「やかましいってなに?」
「うるさいって意味」
律己くんは少し考えて、ふふっと笑った。
「いつもこんな、楽しい」
お父さんは一瞬、はっとしたように見えた。
律己くんはいつも、ほかの子と会話をせず、黙々と食べる。今日もそうだ。
お父さんはそんな律己くんを見つめながら、男の人には物足りないだろう給食を子供に合わせてゆっくり食べて、しばらくしてから独り言みたいに、「そっか」とつぶやいた。
「そうですか…」
テーブルに給食を並べながら、彼がほっとした表情をする。
相当くたびれているみたいだ。午前中に行った公園でも、園児たちに足を埋められながら砂場でぼんやりしていた。
律己くんは彼なりに気を使い、お父さんの手間を増やさないよう、いつも以上にちゃんとしている。だけど時折、ほかの子たちがお父さんにせがんで抱っこしてもらったりするのを、羨ましそうに見ていた。
「お父さんは律己くんの隣で食べてあげてください」
「俺もここで食うんですか」
「もちろんです」
彼が、小さな椅子にびっしり子供たちが座った室内を見回す。その顔には、安らがない、と書いてある。
気持ちはわかるけれど、仕方ない。食事中も仕事はあるのだ。
私も有馬さんと同じテーブルにつき、「いただきます」の号令で食べ始めた。
さっさと食べておかわりと叫ぶ子、苦手なものを口に入れたまま飲み込めず、ちっとも進まない子、集中力がなくて立ち上がってしまう子。同じ学年の中でも、子供の食事風景は千差万別だ。
きちんと食べる律己くんしか知らなかったらしいお父さんは、あぜんとしてその様子を見ていた。隣の律己くんを、そっと肘でつつく。
「…いつもこんなやかましい中で食ってんの?」
「やかましいってなに?」
「うるさいって意味」
律己くんは少し考えて、ふふっと笑った。
「いつもこんな、楽しい」
お父さんは一瞬、はっとしたように見えた。
律己くんはいつも、ほかの子と会話をせず、黙々と食べる。今日もそうだ。
お父さんはそんな律己くんを見つめながら、男の人には物足りないだろう給食を子供に合わせてゆっくり食べて、しばらくしてから独り言みたいに、「そっか」とつぶやいた。