クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「…寝ました?」
「たぶん」
厚いカーテンで暗くした部屋に、小さな寝息が満ちている。食後の喧騒から一転、静かな静かな時間だ。
私はお父さんの横に行き、音をたてないよう腰を下ろした。彼の前では律己くんが、すうすうと寝息を立てている。
「くたびれたでしょう、有馬さんも横になって大丈夫ですよ。時間になったらお呼びしますから」
「やめときます。俺たぶん、本気で寝ちゃうと思うので」
言いながら手の陰であくびをしている。
「…お仕事、忙しいんですか」
「まあ、時期によりますね。今日の分、昨日徹夜したんで、今ちょっと、眠気がピークで」
徹夜って。
「なにをされているんですか?」
「プログラマです、ゲームの」
「そうだったんですか!」
「…なにに見えてました?」
私の驚きように、怪訝そうに眉をひそめる。
しいて言えば無職ですとは言えず、「いえ」と目をそらした。
「時間が不規則なイメージがありますけど」
「ですね、深夜までやるのは普通ですし、早くても夜十時とか、その代わり朝は遅くて」
「…もしかして、登園のために無理に早く起きてます?」
「そうです」
彼がうなずく。
「寝直す時間はないのでそのまま出社してますけど、人が揃いだすのが昼前とかなんで、早く来たからって早く帰ってたら、会話する時間が足りないですよね」
「それは…」