クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
きついだろう、さぞ。だから登園時刻を聞いたとき、あんな反応だったのか。

園もただ子供を預かるだけじゃなく、外遊びや知育といった、保育の計画がある。そのためには朝のうちに園児が揃っていないと身動きがとれない。

果たしてそれが、園の独りよがりじゃないと言いきれるだろうか。

有馬さんも言っていたように、保育園は基本的に、働きながら子育てをする人をサポートするための場所だ。

本末転倒、という言葉が浮かんだ。


「…土日は休めるんですか?」

「開発の終盤は休みなしです、今はそこまでは行ってないんで、まあぼちぼち」

「土曜日も、前月までにご連絡いただければ、お預かりできますよ」

「前にそれ頼もうとしたら、律己くんがかわいそうじゃないですかって別の先生に言われて」


なんだって。

だけど言いそうな保育士はいる。以前『お子さんのために、もっと早く迎えに来てあげてください』と正義感から言って、あるお母さんを激怒させた保育士だ。

有馬さんはたぶん、律己くんがいなければ仕事に行きたいところを、休むしかない状況なんだろう。

これでいいんだろうか、私たち、保育園って。


「先生は?」

「え?」

「保育士って、どんな感じなんですか、やってて」


話していないと寝てしまいそうなのかもしれない。振っておきながら、答えに興味があるのかないのかわからないような表情で、彼は私を見ていた。


「…どんな感じ、なんでしょうね」


こんな静かな部屋では、本音が出てしまう。


「私、大学を出てから一度企業に勤めてるんです。その後学校に通って資格を取って。だから保育士のキャリアはまだ四年なんですよ」

「なんでそんなこと?」


私は正直に「わかりません」と首を振った。

有馬さんは不思議そうに首をひねる。
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