クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「子供は、別に好きじゃないって」

「園の子たちにはもちろん愛情を感じています。ですが子供だからというだけで許せたり、なにもかもが愛らしく見えたりっていう感覚は、なくて」

「ああ」


息子の寝顔を見下ろしながら、彼がうなずいた。


「すごくわかります、それ」

「ほんとですか」

「保育士さんでも、そういう方、いるんですね」


床にあぐらをかいて、背中を少し丸めて。


「なんか、安心しました」


微笑むでもなく、ぽつんとつぶやいた。

彼が父親になり、伴侶を失った経緯を知りたいと思った。どんな人と、どんな人生を築こうとして、どんな運命にそれを取り上げられてしまったんだろう。

手元に残った律己くんを、持て余しながらも彼なりの愛情を注ごうとしている姿は、もどかしくて切ない。

彼は半分目を閉じているような表情で、眠る律己くんを見守っている。

その横顔を、彼に知られないようにそっと眺めた。




「動くなって、おい」

「パパ先生が、引っ張る!」

「なあ…」


午睡の後の着替えの時間、有馬さんは女の子たちにいいように遊ばれていた。

気に入られたらしい。


「どうですか、有馬さん、忙しいでしょう」

「そうですね」


園長がやってきて、何気なく話しかけながら、走り回る子をぱっと捕まえてさっと着替えさせる。有馬さんが目を丸くした。


「保育士たちは本当に頑張ってくれています。毎日休む間もなくて、この仕事は本当に大変なんですよ」

「はあ」

「こういう機会に、ぜひそれを知っていただきたくて。保育士たちがどれほどの努力で子供たちと向き合っているか、やっぱり、現場で見ていただかないと」
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