クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
04. 私という人間
「すてきじゃないですかあー、律己くんのお父さん!」
「え、すてき…?」
研修中の原本(はらもと)先生が、はしゃいだ声で、「すてきですよ!」と繰り返した。帰るタイミングがちょうど一緒になったのだ。
「ちょっとぼーっとしてて、なに考えてるかわからないけど、真面目だし丁寧だし、あっそうだ、私のことユカ先生って呼んじゃったりして」
「あー…」
「子供たちに『原本先生だよー』とか直されて、えってなってたり、かわいいところもあって、いいじゃないですか!」
いいじゃないですかと言われても。
これが若さか。いや、たぶん個人差だ。
「あれ、エリカ先生もこっちですか」
駅に続く階段を一緒に上った私に、原本先生が首をかしげる。
「駅前のポストに、投函したいものがあって」
「ポスト、ありましたっけ」
「けっこう堂々としたのが」
私はうなずいた。
「用がないと気づかなくて、探すとないやつの代表ですね」
「なるほど、ゴミ箱の仲間ね」
「テレビの端っこの天気予報とか」
わかる、と笑いながら階段を上った。
母に宛てた手紙を持って。
* * *
「あ、おはようございます」
久しぶりに有馬さんに会った。
シフトと担当場所の関係で、受け入れも引き渡しも、しばらく彼とはタイミングがずれていたのだ。