クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
母子健康手帳は、私たちの産まれるずっと前からある制度だ。
思いもよらないことだったらしく、有馬さんはへーと目を見開いた。
「今度、聞いてみます」
「行ってらっしゃい」
声をかけると、やけに照れくさそうな顔になってうなずく。ずっとひとり暮らしで、そう言って見送られることも久しくなかったに違いない。
奥様を亡くす前の彼は、どんな感じだったんだろう。
「あいた」
足になにかがぶつかってきた。スポンジのボールだ。
振り返ると、律己くんがお友達とバットのおもちゃで遊んでいるところだった。
「野球してるの?」
それっぽい構えをしながら彼がうなずく。
相手の子がボールを投げた。見当違いの場所を振っておきながら、律己くんはふうと満足そうな息をつく。
「誰のまね?」
「ふくどめ」
きっぱりした答えに笑ってしまった。
律己くんがこんな遊びをするのを見たことがない。以前暮らしていたおばあちゃんの家では、誰も野球中継なんて見なかったんだろう。
家庭のことって、意外とこうして筒抜けなのだ。
気をつけてくださいね、有馬さん。
私たち、けっこういろいろ知っています。
* * *
「はあ?」
『この間見てみて、いい歳してあんな生活、やっぱりよくないなと思ったのよ。あなたが保育士だってことを、先方はたいそう気に入ってて』
「賭けてもいいけど、それ子供好きと混同されてるわ」
『違うの?』
思いもよらないことだったらしく、有馬さんはへーと目を見開いた。
「今度、聞いてみます」
「行ってらっしゃい」
声をかけると、やけに照れくさそうな顔になってうなずく。ずっとひとり暮らしで、そう言って見送られることも久しくなかったに違いない。
奥様を亡くす前の彼は、どんな感じだったんだろう。
「あいた」
足になにかがぶつかってきた。スポンジのボールだ。
振り返ると、律己くんがお友達とバットのおもちゃで遊んでいるところだった。
「野球してるの?」
それっぽい構えをしながら彼がうなずく。
相手の子がボールを投げた。見当違いの場所を振っておきながら、律己くんはふうと満足そうな息をつく。
「誰のまね?」
「ふくどめ」
きっぱりした答えに笑ってしまった。
律己くんがこんな遊びをするのを見たことがない。以前暮らしていたおばあちゃんの家では、誰も野球中継なんて見なかったんだろう。
家庭のことって、意外とこうして筒抜けなのだ。
気をつけてくださいね、有馬さん。
私たち、けっこういろいろ知っています。
* * *
「はあ?」
『この間見てみて、いい歳してあんな生活、やっぱりよくないなと思ったのよ。あなたが保育士だってことを、先方はたいそう気に入ってて』
「賭けてもいいけど、それ子供好きと混同されてるわ」
『違うの?』