クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「診せられないったって、こんな時間にやってる歯医者なんてないでしょ」
「たぶんですけど、総合病院の夜間窓口に行ったんじゃないかと…」
「…都合よく口腔外科医が当直してる可能性なんて、あるかなあ?」
心の底から疑問みたいに眉をひそめる。
よその家に響いてしまわないよう、小声で話しながら。ポーチと廊下を隔てる銀色のフェンスに、彼はくつろいだ様子で片腕を預けている。
「どうなんでしょう。でももう、私たちには手立てがなくて」
「まあ、ああいう親の元に生まれた宿命と諦めて、翔太くんには頑張ってもらうしかないでしょうね」
「かばっていただいてありがとうございました、あれで職員は救われました」
「いや、そういうつもりでもなかったんで。子供のいる前で言うべきでもなかったと思うし、お母さんが動転するのもよくわかるし」
私のお礼を弾き返したいかのように、きまり悪そうに手を振る。
「俺も頭に血が上ってたんで。言いすぎました」
「血が上ってたんですか?」
「そうですね、俺はそれまで、エリカ先生が処置するのを、冷静だなあ、すごいなあって見てたんで」
…え。
有馬さんが腕をこすりながら、うつむきがちに言う。
「それあんなふうに攻撃されたら、そりゃかっとなりますよね」
彼はどうやら、自分がとても恥ずかしいことをしたと思っているようだ。居心地悪そうに足を踏み替え、フェンスに寄り掛かって腕を組んだ。
部屋着なのか、ぴたりと身体に合った薄いシャツに、下はスエット。
私は急に落ち着かなくなり、「えっと」とそわそわ手をこすり合わせた。
「あっ、り、律己くん、大丈夫でしょうか、ひとりで」
「あ、ですね、そろそろ戻ります」
「ありがとうございました」
「いや、こっちこそわざわざ…」
「失礼します。おやすみなさい」
「たぶんですけど、総合病院の夜間窓口に行ったんじゃないかと…」
「…都合よく口腔外科医が当直してる可能性なんて、あるかなあ?」
心の底から疑問みたいに眉をひそめる。
よその家に響いてしまわないよう、小声で話しながら。ポーチと廊下を隔てる銀色のフェンスに、彼はくつろいだ様子で片腕を預けている。
「どうなんでしょう。でももう、私たちには手立てがなくて」
「まあ、ああいう親の元に生まれた宿命と諦めて、翔太くんには頑張ってもらうしかないでしょうね」
「かばっていただいてありがとうございました、あれで職員は救われました」
「いや、そういうつもりでもなかったんで。子供のいる前で言うべきでもなかったと思うし、お母さんが動転するのもよくわかるし」
私のお礼を弾き返したいかのように、きまり悪そうに手を振る。
「俺も頭に血が上ってたんで。言いすぎました」
「血が上ってたんですか?」
「そうですね、俺はそれまで、エリカ先生が処置するのを、冷静だなあ、すごいなあって見てたんで」
…え。
有馬さんが腕をこすりながら、うつむきがちに言う。
「それあんなふうに攻撃されたら、そりゃかっとなりますよね」
彼はどうやら、自分がとても恥ずかしいことをしたと思っているようだ。居心地悪そうに足を踏み替え、フェンスに寄り掛かって腕を組んだ。
部屋着なのか、ぴたりと身体に合った薄いシャツに、下はスエット。
私は急に落ち着かなくなり、「えっと」とそわそわ手をこすり合わせた。
「あっ、り、律己くん、大丈夫でしょうか、ひとりで」
「あ、ですね、そろそろ戻ります」
「ありがとうございました」
「いや、こっちこそわざわざ…」
「失礼します。おやすみなさい」