クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
そうか。

じゃあもう、有馬さんには当分会えないんだ。


『治ったなら頼むと言うので』


有馬さんが、そうしたがっていたんだ。

自分でもびっくりするくらい、その事実は受け止めがたかった。




けれど一週間ほどした頃、朝、律己くんとやってきたのは、有馬さんだった。


「おはようございます」

「どうも」


明らかにイライラした様子で、無言で律己くんをこちらに押し出し、登園簿に時刻を書き込んでいる。

久しぶりの早起きで眠いのかと様子をうかがっていたら、彼が手元を見下ろしたまま尋ねてきた。


「…園て、早いと何時から預けられるんですか」

「七時半です」

「七時半…」


暗い声で繰り返し、髪をかき上げる。それじゃ遅すぎると言っているみたいに。


「あの、おばあちゃんは」

「事情ができて。また当分俺が来ます」


まるでそのことが耐えがたくて仕方ないみたいに、荒っぽく言い捨てて、律己くんが手を振っているのに振り返りもせず、彼は行ってしまった。




「今週、土曜保育の申し込みがありました。順番だと倉田先生のシフトなんですが、入れます?」

「はい、大丈夫です」


日中、事務室にいたとき、園長から声をかけられた。


「急でごめんなさいね」

「いいですよ、どの子ですか?」

「律己くんなの」
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