クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
有馬さんは足元の律己くんを見た。
園から直接来たようで、リュックを背負っている。
八時過ぎという時刻から察するに、買い物は迎えの後で、を実行してくれたわけではなく、単に仕事から帰るのがぎりぎりになってしまったんだろう。
「じゃあ、ちょっとあっちで食わせてきます」
「すみません」
スーパーと同じ建物の中に、九時まで営業しているコーヒーショップがある。有馬さんは律己くんをそこへ連れていき、サンドイッチとジュースをあてがって出てきた。
「なんですか?」
「ちょっとお話をしたくて、あの、ここでもいいでしょうか」
律己くんから目を離すわけにはいかない。私がコーヒーショップのすぐ脇にあるベンチを指さすと、有馬さんはうなずいた。
「で、なんですか」
「あの、おばあちゃんはどうされたんですか? よかったら事情というのを、伺えないかと…」
私は左隣に座った有馬さんを覗き込んだ。
Tシャツにジーンズ姿の彼は、視線を床に落として黙っている。
「あの…」
「母が引っ越すことになったんです」
えっ。
「というかもう移り住んでます。母の兄が要介護になって。結婚してなくて、ひとり暮らしなんで、母が行くしかなくて」
「…お父様は」
「残ってます。母もたまに父の身の回りの世話をしに帰ってくる予定です。でもとても、律己の面倒までは見られない」
有馬さんは軽く開いた脚の間で、両手を組んでいる。その手を見つめながら、また口をつぐんだ。
「…土曜保育を申し込まれたんですね」
「仕事が佳境なんです」
園から直接来たようで、リュックを背負っている。
八時過ぎという時刻から察するに、買い物は迎えの後で、を実行してくれたわけではなく、単に仕事から帰るのがぎりぎりになってしまったんだろう。
「じゃあ、ちょっとあっちで食わせてきます」
「すみません」
スーパーと同じ建物の中に、九時まで営業しているコーヒーショップがある。有馬さんは律己くんをそこへ連れていき、サンドイッチとジュースをあてがって出てきた。
「なんですか?」
「ちょっとお話をしたくて、あの、ここでもいいでしょうか」
律己くんから目を離すわけにはいかない。私がコーヒーショップのすぐ脇にあるベンチを指さすと、有馬さんはうなずいた。
「で、なんですか」
「あの、おばあちゃんはどうされたんですか? よかったら事情というのを、伺えないかと…」
私は左隣に座った有馬さんを覗き込んだ。
Tシャツにジーンズ姿の彼は、視線を床に落として黙っている。
「あの…」
「母が引っ越すことになったんです」
えっ。
「というかもう移り住んでます。母の兄が要介護になって。結婚してなくて、ひとり暮らしなんで、母が行くしかなくて」
「…お父様は」
「残ってます。母もたまに父の身の回りの世話をしに帰ってくる予定です。でもとても、律己の面倒までは見られない」
有馬さんは軽く開いた脚の間で、両手を組んでいる。その手を見つめながら、また口をつぐんだ。
「…土曜保育を申し込まれたんですね」
「仕事が佳境なんです」