クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
簡潔な答え。
なにか手助けできたらと思うものの、私には言えることもなく、彼を見つめるしかできない。
有馬さんは唇を噛み、組んだ手に額を押しつけるように身を屈めた。
「本当は、毎日会社に泊まり込みたいくらいなんです。俺はマネージャーです。部下が働いている間は、その仕事を見て評価してやる責任がある。子供の迎えなんて理由で帰ってる場合じゃないのに」
切実な響きだった。
つい心の叫びが漏れてしまったような、そんな声音で、私は思わず彼の背中に手を当てた。Tシャツの下の肌が、わずかに汗ばんでいるのがわかる。
「正直、母の助けのない、この状態でやっていける自信がありません。タイミングも悪い。この大事なときに会社にいないことで、どれだけ信用を失うか。俺自身、納得いくまで仕事できないのは本当につらい」
「有馬さん…」
「さっき園に行ったとき言われました。『忙しいのもわかりますが、律己くんのことを一番に考えてあげてください』って」
誰がそんなことを。
有馬さんが顔を上げた。私に向けられた目は、苛立ちと憎しみに満ちていた。
「あんたたちは」
感情が強すぎて、声が揺れている。
「あんたたちは、子供を預かる仕事をしておきながら、預けることは子供によくないと言う。子供は親といるのが一番だと言う。その言葉がどんなに俺たちを追い詰めるか、わかってない」
「有馬さん…」
「二言目には"子供がかわいそう"だ。それを出されたらこっちがなにも言えなくなるのを知っていて、それでも言う」
私はかける言葉もなく、糾弾を浴びた。
「どうして思いきり働くことに罪悪感を覚えさせるんです? 子供を預けるのがいいなんてこっちだって思ってない。俺ですら葛藤があるんだ。普通の親ならもっとある。追い打ちをかけるようなことを言って、なにがしたいんだ?」
私は彼がこれだけ余裕をなくしていたことに、今ごろ気づいて愕然とした。いつも飄々としている有馬さんが、ここまで追い詰められた様子を見せるなんて。
なにか手助けできたらと思うものの、私には言えることもなく、彼を見つめるしかできない。
有馬さんは唇を噛み、組んだ手に額を押しつけるように身を屈めた。
「本当は、毎日会社に泊まり込みたいくらいなんです。俺はマネージャーです。部下が働いている間は、その仕事を見て評価してやる責任がある。子供の迎えなんて理由で帰ってる場合じゃないのに」
切実な響きだった。
つい心の叫びが漏れてしまったような、そんな声音で、私は思わず彼の背中に手を当てた。Tシャツの下の肌が、わずかに汗ばんでいるのがわかる。
「正直、母の助けのない、この状態でやっていける自信がありません。タイミングも悪い。この大事なときに会社にいないことで、どれだけ信用を失うか。俺自身、納得いくまで仕事できないのは本当につらい」
「有馬さん…」
「さっき園に行ったとき言われました。『忙しいのもわかりますが、律己くんのことを一番に考えてあげてください』って」
誰がそんなことを。
有馬さんが顔を上げた。私に向けられた目は、苛立ちと憎しみに満ちていた。
「あんたたちは」
感情が強すぎて、声が揺れている。
「あんたたちは、子供を預かる仕事をしておきながら、預けることは子供によくないと言う。子供は親といるのが一番だと言う。その言葉がどんなに俺たちを追い詰めるか、わかってない」
「有馬さん…」
「二言目には"子供がかわいそう"だ。それを出されたらこっちがなにも言えなくなるのを知っていて、それでも言う」
私はかける言葉もなく、糾弾を浴びた。
「どうして思いきり働くことに罪悪感を覚えさせるんです? 子供を預けるのがいいなんてこっちだって思ってない。俺ですら葛藤があるんだ。普通の親ならもっとある。追い打ちをかけるようなことを言って、なにがしたいんだ?」
私は彼がこれだけ余裕をなくしていたことに、今ごろ気づいて愕然とした。いつも飄々としている有馬さんが、ここまで追い詰められた様子を見せるなんて。