クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
建物の出口の方へ向かう途中、律己くんが有馬さんの服を引っ張った。「ん?」と振り向いた彼に、両手を広げてみせる。

有馬さんは足を止め、じっと律己くんを見下ろし。

それから微笑んだ。


「甘えてくれんのか、お前」


バンザイをして待っている息子の脇に手を回し、抱え上げてやる。


「俺より大人だな」


感心したように言う父親に、律己くんがぎゅっと抱きついた。

片手に律己くんを抱え、片手に子供用のリュックを提げて。その後ろ姿を見ていたら泣けてきた。

外は少し肌寒いと感じるくらいの風が吹いていた。

有馬さん親子は何事か、会話をしているように見えた。律己くんの言葉はそう多くないから、話すというより、彼らの間でだけ通じるやりとりをしているのかもしれない。

ふと有馬さんが声をたてて笑い、ちょうど同じ高さにある律己くんの顔を見つめ。


「ママに似てきたな、律己」


切なげに、嬉しそうに、そう言った。

私はどうしてか、声をかけることもできず、分かれ道まで、彼らの後をただ、ついていった。



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