クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「身体を壊さないといいけれど」
有馬さんの家で帰りを待つんだろう、マンションのエントランスのほうへ向かうふたりを見送りながら、ほっと心が軽くなるのを感じていた。
有馬さんが責められなくてよかった。律己くんが保育園に長く預けられることを、気の毒がられなくてよかった。
本当に、私はいったいどの立場にいるんだろう。
なにを正解と思ってこの仕事をすればいいのか、最近わからない。そもそも正解なんて、最初からないのかもしれないけど。
そうだ、と保育士になろうと決心した頃のことを思い出した。
私は、人がなにを"正解"と思っているのか、知りたくてこの世界に入ったんだった。
* * *
「おはようございます」
「おはようございます…、あれ、今日ってエリカ先生でした?」
翌朝、律己くんを伴って園にやってきた有馬さんが、きょとんとした。
「交代があったんです」
「そうなんですか。昨日、すみませんでした、帰れなくて」
「お仕事、大変ですね」
しゃがみ込んで、律己くんの身体をチェックしながら話しかけると、登園簿に書き込んでいた有馬さんが、ちらっと私を見下ろして笑った。
「そろそろヤマ越えそうなんで。土曜に預ける時間は減らせそうです」
「そうですか!」
思わず弾んだ声を出してしまってから、はっとした。
案の定、有馬さんはなんともいえない表情で「これまですみませんでした」と曖昧に笑む。
違うんです、あの。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「有馬さん!」
出ていこうとした彼の腕を思わず掴み、引き留めた。
彼が驚いた顔で振り返る。
有馬さんの家で帰りを待つんだろう、マンションのエントランスのほうへ向かうふたりを見送りながら、ほっと心が軽くなるのを感じていた。
有馬さんが責められなくてよかった。律己くんが保育園に長く預けられることを、気の毒がられなくてよかった。
本当に、私はいったいどの立場にいるんだろう。
なにを正解と思ってこの仕事をすればいいのか、最近わからない。そもそも正解なんて、最初からないのかもしれないけど。
そうだ、と保育士になろうと決心した頃のことを思い出した。
私は、人がなにを"正解"と思っているのか、知りたくてこの世界に入ったんだった。
* * *
「おはようございます」
「おはようございます…、あれ、今日ってエリカ先生でした?」
翌朝、律己くんを伴って園にやってきた有馬さんが、きょとんとした。
「交代があったんです」
「そうなんですか。昨日、すみませんでした、帰れなくて」
「お仕事、大変ですね」
しゃがみ込んで、律己くんの身体をチェックしながら話しかけると、登園簿に書き込んでいた有馬さんが、ちらっと私を見下ろして笑った。
「そろそろヤマ越えそうなんで。土曜に預ける時間は減らせそうです」
「そうですか!」
思わず弾んだ声を出してしまってから、はっとした。
案の定、有馬さんはなんともいえない表情で「これまですみませんでした」と曖昧に笑む。
違うんです、あの。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「有馬さん!」
出ていこうとした彼の腕を思わず掴み、引き留めた。
彼が驚いた顔で振り返る。