クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「すみません、違います」
「なにがです?」
「よかったって言ったのは、有馬さんのお仕事が、少し楽になりそうだからで。あの、本当にお忙しそうだったので、倒れたりしないか心配してたんです、それでです」
決して律己くんの保育時間が短くなるのを喜んだわけじゃないんです。
「あの、本当です…」
彼がなにも言わないので、私は念を押した。どうしてこんなに必死になっているんだろう、と内心で首をひねりながら。
じっと私を見ていた有馬さんが、ふっと表情を緩める。
「どうも」
「本当ですよ」
「信じてますよ」
暑くなってきたので、彼は最近たいてい半袖で、今日もそうだ。とっさに掴んだ素肌の腕は、温かい。
「俺、エリカ先生の言葉を疑ったことなんて、一度もないですよ」
有馬さんは微笑み、力の抜けた私の手から腕をほどくと、「じゃあ」ともう一度言って玄関のほうへ向かった。
「あの…行ってらっしゃい」
靴を履きながら、彼がこちらを向く。
「行ってきます」
何度このやりとりを繰り返しても慣れないみたいで、照れくさそうに。
多忙さを表しているように、うなじにかかるほど伸びた髪を揺らし、日に日に夏らしくなる空気の中に出ていく。
「パパ、さっき帰ってきたの」
「え?」
突然しゃべり出したのは、律己くんだった。
珍しい。
「なにがです?」
「よかったって言ったのは、有馬さんのお仕事が、少し楽になりそうだからで。あの、本当にお忙しそうだったので、倒れたりしないか心配してたんです、それでです」
決して律己くんの保育時間が短くなるのを喜んだわけじゃないんです。
「あの、本当です…」
彼がなにも言わないので、私は念を押した。どうしてこんなに必死になっているんだろう、と内心で首をひねりながら。
じっと私を見ていた有馬さんが、ふっと表情を緩める。
「どうも」
「本当ですよ」
「信じてますよ」
暑くなってきたので、彼は最近たいてい半袖で、今日もそうだ。とっさに掴んだ素肌の腕は、温かい。
「俺、エリカ先生の言葉を疑ったことなんて、一度もないですよ」
有馬さんは微笑み、力の抜けた私の手から腕をほどくと、「じゃあ」ともう一度言って玄関のほうへ向かった。
「あの…行ってらっしゃい」
靴を履きながら、彼がこちらを向く。
「行ってきます」
何度このやりとりを繰り返しても慣れないみたいで、照れくさそうに。
多忙さを表しているように、うなじにかかるほど伸びた髪を揺らし、日に日に夏らしくなる空気の中に出ていく。
「パパ、さっき帰ってきたの」
「え?」
突然しゃべり出したのは、律己くんだった。
珍しい。