クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「莉々ちゃん、あっちに…」


せめて彼女だけでも奥へ、と思ったとき、電子錠が解除される音がした。

えっ、暗証番号を知っている人?

ドアが風にもぎ取られるように開き、人が飛び込んでくる。

懐中電灯を手にしたその人は、すぐ目の前にいた私を見つけ、気遣わしげだった顔を、ほっと緩めた。


「エリカ先生」


着ていたウインドブレーカーの水を手で払いながら、尋ねてくる。


「やっぱり、残ってるんじゃないかと思いました。大丈夫ですか?」


私は震える声を、必死に抑えた。

気を抜いたら泣いてしまいそうだった。


「有馬さん…」


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