クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
09. 本当ですか
「できちゃった婚だったわけね」
「まあずるずるとこの歳までつきあってて、今さら子供でもできない限り結婚できなかったんじゃないの。女のほうの計画妊娠じゃない?」
「授かり婚とか自分で言われると白けるわ。美化しすぎ。デキ婚で十分」
高校の同級生の結婚式二次会は立食パーティだった。
壁際にある椅子のひとつに座ったら、そんな会話が飛び込んできたので慌ててその場を離れた。久しぶりのお酒くらい、祝福の空気の中で飲みたい。
「エリカ、新郎新婦と話しに行こうよ」
「うん」
声をかけてもらってほっとした。二次会の連絡をくれた、あの友人だ。
高校三年生のときの同級生たちは、ほとんどが東京に進学したため、学生時代もしょっちゅう集まっていた。
私も最初は時間が許せば参加していたのだけれど、だんだんとつきあいのフィールドが大学やバイト先にシフトしていったので、早めにフェードアウトした。
今回の新婦は、まだ集まりに参加していた頃、よく顔を合わせていた仲だ。
「久しぶり、おめでとう」
「ありがとー!」
ひな壇に座った新婦と、シャンパングラスをカチンと合わせて乾杯する。ドレスと花と光に囲まれた新婦は、幸せそうではあるものの、やっぱり二十代前半の頃見た花嫁たちと比べると冷静に見えるのは気のせいだろうか。
「お腹、大丈夫なの?」
「うん、幸いつわりもそんな酷くないし」
友人と新婦の、そんな会話を聞く。
友人がふと、新郎がほかの人と話しているのを確かめてから、声をひそめた。
「ね、ね、計画妊娠ってほんと?」
わっ、晴れの場で突っ込むな、と驚きつつ、私も耳を寄せる。
新婦は冷めた笑みをはっと漏らし、「当たり前でしょ」と言った。