幸せ日和
忍び寄る影
えーん、えーん……

夢の中、女の子が泣いている。

『どうしたの?』

男の子がやって来た。

『あそこ!
あそこに虫が…』

女の子が指さす先に、小さな蜘蛛がいる。

『…な~んだぁ。
あれくらい、どうって事ないじゃん!』

男の子が笑い、小さな蜘蛛をどこかに逃がした。

『ほら、もういないよ。
ヨリは怖がりだなぁ…』

『…ひっく、ひっく。
ありがとう、トモ』

女の子は男の子をトモと言い、男の子は女の子をヨリと言った。
…もしかして、あれはわたしと、トモ?

トモ…長谷川 友紀(はせがわ ともき)。
小春日和の幼なじみで、5歳の時、両親の離婚で、トモが引越しをして以来、会った事はない。

なんで今更、あんな夢を…?

ザワザワザワ…
胸騒ぎがする。

日和は隣で眠る未来(みく)を見た。
この幸せが、壊れなければいいんだけど…。
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