好きになっちゃいました!

学はおもわず飛び出してきてしまって財布もスマホもすべて家においてきてしまった。

行くあてもないし、でも今飛び出してきたのに今戻るってどうなのよ

だって……

ー君が僕の手玉になっちゃえばいいんだー

『……っ』

学は顔をまた赤くする。
訳が分からなかった。いきなり気配無くあらわれて、いきなり説教されて、いきなりキスされて、誘惑されて、頭の中ぐちゃぐちゃになる。
あんなやつとこれから同居?同室?
やばい、なんか色々やばい気がする。いろいろ考えると益々ごちゃごちゃする。
だからといって財布もスマホも全部あの部屋に置いてきた。これではどこにも行けないでもとりにすぐには行けない。学は考えた、そして。

『あそこに行くか……』

ゆっくり歩きだした。向かった先は桜木学園、時間は日も暮れた最終下校の時間、部活をやっている生徒がどんどん下校していくなか学は中に入って行く。そしてどんどん校舎の奥に進み着いた先は図書室。
図書室の扉をあけるともう誰もいないのだろう電気も付いておらずカーテンも閉められて真っ暗だ。学はパチンと電気のスイッチを入れた。
ズラリとならぶ書庫の数々、学はカーテンを開き窓を空ける。
外は夕焼けでオレンジ色に染まって入ってくる風が少し冷たい。
学はその足で向かった本棚は考古学、特に恐竜に関する本を多く持って図書室にある長机の1つの席に着いて読み始める。
ここで一時間くらい潰せば龍治か七緒のどちらかが家に帰って来る時間。
それにあわせてここを出ればいいと思い本を読み始めた。


最初に読んだのはジュラ紀の恐竜図鑑、気になったことは図書室の受け付けに備え付けのペン立てに沢山あるボールペンでこれも備え付けの損じのコピー用紙を4分割にして紐でくくられた裏紙のメモ帳に豆にメモしていく。

本当はジュラ紀のみにしておくつもりだったが、あまりにも没頭してしまい分厚い白亜紀の本まで読み進め中盤辺りにチャイムがなる。

学ははっとして時計を見ると時刻は夜の20時を指していた。
ここの閉門時間は20時半、1時間以上いてしまったしスマホもないから龍治や七緒に連絡がとれない。
未成年が連絡もなしに20時過ぎても帰って来なかったら心配するだろうし学は本を片付けて窓とカーテンを閉めて電気を消すと廊下すらもう真っ暗になっていて学は腕につけていたデジタルの腕時計についてるライトをつけて照らすが気休め程度の明かりだが仕方ない。学が校舎を出ようと暗い廊下を歩き始めた時だ。

ザワッ

学が所属するクラス、1年A組の教室に差し掛かった時だ。
誰もいないはずの教室から音がした。学は幽霊とかそういう類いは信じないから恐怖は感じなかったものの、結構大きな音だから気になって教室に入る。

『あ……』

教室に入ると目に入ってきたのは紫色の長い髪、窓が開いていてその長い髪とカーテンが揺れていた。

色が黒の光沢のある革のチューブトップのへそだしというスタイル。それに同じ生地で出来たホットパンツにロングの黒い編みあげのブーツ
ホットパンツと編み上げブーツの間には俗に言う『絶対領域』と呼ばれる太股が露になり
細い腰に同じ生地の黒い布が巻かれ風に靡く。

はじめは女かと思ったが身長や体の骨格は男で、確かに普通の男にしては細身な体だが確かに男だ。
そんな男が零の机をじっと見ていた。

とりあえず思ったことは

演劇部のやつ?
もしくは、コスプレ好きな変態?学はもうすぐ校門しまるぞと言おうとしたときだ。

『ゼロと同じ匂い』

紫の長い髪の男がこっちを振り返りようやく顔見えた。
そして学は思わずうわあああ!と声をあげた。
なぜなら振り返ったその男の顔は耳は長くとがっていて目は獣もように光る金の瞳、額のまん中には角が一本はえていてあれではまるで……


『うわあああ!悪魔!魔王!鬼!』


今自分が紫の長い髪を持つ男に思ったことを、自分を見てその男に同じ事を言われたら何も怖くなくなった。

『新たな兵器か……俺たち合成獣(キメラ)にたいして悪魔を召喚するだなんて、侮っていた』

ものすごい警戒されそう言われた学。
兵器だの悪魔だの。
学は思った。なんか今日やたら傷つくな。


『でもなぜだ?なぜお前のような悪魔から天使のように美しかったゼロの匂いがする?まさか……』

バサッとその男の背中に黒いコウモリのような翼が現れ広がったと思えばそれは一瞬だった。


『ゼロを食ったな化け物め‼』


一瞬でそれは瞬間移動、一気に間合いを詰められてそのまま廊下に押したおされた。
化け物に化け物といわれる俺の顔って……ちょっと切ない。

『ゼロってなんだよ……どけ、人を呼ぶぞ』

『しらを切るつもりだな、でも俺の鼻は誤魔化せない。間違いなくゼロの匂いだ。ゼロをどこにやった、化け物め!』

その角の生えた男は避けようとしないから学が無理やり退けようとしたときだ。

『本当のこと話さないとこの首へし折る』

ガッと首を片手で掴まれた、ただその握力が順丈じゃない。
学は2メートル近くある巨体、向こうは低いわけじゃないが170センチほどの細身、はじめは払いのけられると思ったが

抑えつけられた体が全く動かない、人間の力じゃない。

そしてバカなのか、話す話さない以前にこんだけ首絞めたら声もでないわ

『カハ……!』

ヤバイ、目が霞んできた……学が意識飛びそうになったときだ。

パアン!

生でははじめて聞く、それは銃声だ。その音と同時に脱兎のように自分の首を絞めていた角の生えた男がバッと避ける。
学はゲホゲホと咳き込む。


『学‼そのまま伏せていろ!』

そこにきたのはライフル銃を構えて走ってきた龍治の姿だ。
龍治は間髪いれず銃口を角の生えた男に向けて引き金を引いた。
引き金を引くと飛び出すには銃弾ではなく小さな薬品のついた針だ。
角の男は先程見せた瞬間移動のような動きでその針をかわす。

『がっくん!大丈夫?』

七緒が倒れる学のもとにかけよる。

『あれは……』

『あとで話すから今はここは龍治さんに任せて逃げますよ』

七緒は学の手を引いて走り出した。

『待って七緒さん!龍治が!』

『分かってます‼でもそれが彼の願いなの、今は振り返らず走って‼』

引っ張る七緒の手が力がはいるのがわかった。龍治のことが本当に心配なのは七緒の方だ。

七緒と学はグラウンドに飛び出す。

グラウンドまで出てくると減速し一旦呼吸を整える。


『七緒さん、今の化け物って?なんで龍治が銃なんか持ってるんだよ』

ゼイゼイ息をきらしながら話す。

『今の生き物は合成獣キメラ、16年前、国が科学者を集めて新人類計画という狂った計画のために産み出された人間と動物や植物、爬虫類の遺伝子を組み合わせた人造生物。その失敗作のなかの一つだよ。』


説明されてもさっぱりわからない。

『失敗作はすべて破棄したはずだった。でも生きていたの、ある科学者の手で皆生かされてたの。彼らは復讐するつもりです!そのために成功作の細胞を求めに……』


『なんのことかさっぱりわかんねーよ!それはともかく七緒さん、警察、警察呼ばないと!』

『警察が呼べないんです……』


なんで?!と言おうとしたときだ。

パリーンとガラスの割れる音がして振り替える。


『なんであの計画を知ってる人間しか知らない細胞抑制剤なんて持ってるんだよ、それにゼロと同じ匂いのする巨人、あんたら普通の人間じゃないな』

割れたガラスからさっきの角の生えた紫の長い髪の男がコウモリのような大きな羽を広げて満月を背に上空からこちらを見下ろす。

『こいつはかえしてやるよ。』

するとチューブトップで露になった腰から植物のツタのようなものが生えてきて龍治に絡みついてそのまま学と七緒の前にドサッと落とされると。七緒が悲鳴をあげて龍治さん!と駆け寄る。
龍治は鞭で激しく叩かれたようなアザが無数にありメガネは割れてぐったりとしていた。


『ゼロはいないけど、あわよくばゼロと同じ匂いのするそこのやつ連れてこうかな。強くて凶悪そうだし新しい仲間を連れていけば(ファイヴ様)もお喜びになる。』

シュルっと腰から生えた植物のツタのさきが学に向いた。

『だ、ダメだ……学に手を出すな……こいつはただの人間だ……』

龍治が学を庇おうと立ち上がろうとする。

『お前は下がってろ!』

バチンと腰から生えた植物のツタが鞭のように龍治を叩いた。
龍治はぐあああと倒れ七緒が龍治さん!と涙を浮かべ龍治を受け止めた。

今日は一体なんて日なんだ。厄日なのか?なんで俺ばっかり、
このままじゃ、このままじゃ俺は……

『死ね!』

鞭のような腰から伸びた植物のツタが学めがけて飛んできた時だ。

ドシュッと光が一筋横切ればボタボタっとそのツタが切られてグラウンドに砂ぼこりをあげて落ちる。

『アメリカからわざわざ追いかけて来たのー?しつこいね。しつこい男は嫌われちゃうなー』

ツタを切った光の元をたどったらそれは鋭く尖った氷の刃だった。
そしてその声をたどったら、あの男がツカツカとこちらに歩いて来るのだった。

『零(れい)……』

絶世の美少年、ミントグリーンの肩先にかかる程度に長い髪を風に揺らせ長い睫毛に大きな瞳

零は微笑みを浮かべてこちらに歩いてくる。

『ゼロ!いたんじゃないか探したよ。さあ一緒に(ファイヴ様)の所に帰ろうよ!』

紫の長髪の男が零(れい)を見るなり彼をゼロと読んだ。しかし零は嘲笑うかのように答えた。

『やだよ。あんな陰険変態ジジイ。皆も相変わらずバカだよね、あんなクソジジイの足にすがってあいつの良いように使われて生きるなんて。それともあれかな?ジジイに体の隅々まで調教しまくられてもうジジイの調教無しじゃ生きてけないかんじ?あはは!情けない、どうせそのSMクラブみたいな格好もジジイの趣味だろう?なあ、セカンド?』

零はその紫の長髪で角が生えた男を『セカンド』と呼び露出の激しいセカンドの服をSMクラブの服と嘲笑った。


『俺の悪口は構わないがファイヴ様の悪口は許さないぞゼロ、撤回しろ‼』

『うふふ、撤回しない。だって本当のことだもーん』

まるで無邪気な少女のように微笑み零はセカンドと呼ぶ男を挑発した。
セカンドはみるみる紅潮して怒りを露にした。

『俺達が生き延びたのはファイヴ様のおかげだ!ファイヴ様があのとき、失敗作で生命維持装置を外され破棄という名目で国の身勝手て殺されかけた俺達を助けてくれなかったら、今頃俺も(サード)も(フォース)もこの世にいなかった。ゼロ、お前は成功品だったけどそれを理解してくれた仲間だったじゃないか!一緒に、この国に復讐しようって約束したじゃないか!』


ー君はゼロじゃないレイ、僕の息子だ。逃げなさいそして運命に抗え戦え、そして生きて幸せを掴め、幸福は向こうからこない、運命と戦い必死に幸福になろうとしてる人に来るんだー


ーレイ、生きるんだ人としてー


ーレイ、行くんだ幸福を掴むために日本へー



『そうだね、失敗作を身勝手に破棄する国も成功品だといって兵器として体の隅々まで実験実験実験モルモットみたいにいじくり回す国も全部爆発させて吹っ飛ばしてやりたい気持ちはあるよ。』

『じゃあ!』

『でも、そんなんじゃ僕らは幸福にはなれない。』

零は目を細めた。

『吹っ飛ばした先になにがあるの?人間とは違う見た目だから人間になれない腹いせにただ暴れてるだけじゃん、考え方ダダこねる子供だよ。』

『成功品のお前に失敗作の俺達のなにが分かるんだ!』

セカンドは声をあげて腰から生えた鞭のようなツタを大きく振りかぶって零めがけて放つが零の目の前まで来るとそれはピタリと止まり凍って砕けた。








































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