阿倍黎次は目立たない。(12/10更新)
その翌日の帰り道。その日は生徒会がなかったのだが、代わりに俺には寄るところがあった。

「『ピンポーン』」

インターホンが鳴る。高校入学を機に単身上京してきたという日野の家は、駅から少し歩いたところにあるアパートの一室だった。

「……は〜い……」

少し開いたドアから、日野の顔が覗かれた。しばらく不登校なのもあって、日野の顔を生で見るのは久しぶりだった。

「……何しに来たの……?」

嘲笑いに来たのかと疑っているような日野の目に、俺は怒りよりも哀しみを覚えた。俺は外に立ったまま答えた。

「いや……最近どうしてんのかなって」
「どうもこうもない。日野歌澄の名が世間から消える日も近いのに、どんな顔して学校行ったらいいのよ?」
「確かにな……」

口ではそう言いつつ、日野は普通の女子高生に戻っただけではとも感じた。

「そっちはどうなの? 金野と佐賀に仕返しできそう?」
「……それに繋がるかどうかは分からないけど、生徒会に入ってみた。兄貴に誘われただけだけどな」

生徒会。その言葉を口にした瞬間、日野の顔が青くなった。

「何でそんな自爆しちゃうのよ……」
「自爆?」
「……入って。ここからの話は長くなりそうだから」

開きかけだったドアが、俺が入れるほどに開いた。だがドアの奥は電気がついておらず、暗かった。電気などつけてしまうと、スポットライトを浴びていた頃を思い出し、惨めになってしまうからだろうか。
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