阿倍黎次は目立たない。(12/10更新)
「それにしても、よく俺のことなんか覚えてたな」
入学初日(正確には2日目かもしれないが)に声をかけられることなど滅多になくて、俺自身それなりに不思議に感じていた。
「まぁ、あれだけ有名人が集合してるからね。阿倍くんみたいな一般的な人が、かえって目立っちゃってすぐ覚えられた」
「悪かったな、平凡で」
少しばかり悪態をついていたのは、俺は平凡だから目立つはずはないということを確認する意味も多少あったかもしれなかった。
「そうは言っても、遅かれ早かれ阿倍くんの名前は覚えることになるはずだったと思うし、よろしくね」
「ああ」
コミュニケーション力不足かもしれない。俺はそう思った。
特に面白い話題を持っているわけでもなければ、何でもないことを面白く語れるわけでもない。だから会話が袋に残ったパスタの切れ端のように細切れになってしまい、面白みのある印象を与えられず、結果として影が薄くなる。兄ならばきっとそうはならなかったはずだ。兄は昔からとても社交的な性格で、接しやすい感じのする人だった。もし兄が今俺の隣にいたなら、持ち前の話術で話に花が咲いたのだろうが、生徒会長であり今年から受験生でもある兄は、俺よりも先に学校に着いていた。
教室に着いても日野はマスクを外さなかった。だが教室にいるメンバーは当然日野の生姿を昨日拝見しており、有名人の群れがまた一つ大きくなっていた。昨日の段階で連絡先を交換し、特にこれ以上絡みに行く必要もなかった俺は、イヤホンを耳に詰め込み、音楽をシャッフルさせて聴いていた。
そしてその日は終了。授業もほどほどに理解し、味気ない1日だった。
入学初日(正確には2日目かもしれないが)に声をかけられることなど滅多になくて、俺自身それなりに不思議に感じていた。
「まぁ、あれだけ有名人が集合してるからね。阿倍くんみたいな一般的な人が、かえって目立っちゃってすぐ覚えられた」
「悪かったな、平凡で」
少しばかり悪態をついていたのは、俺は平凡だから目立つはずはないということを確認する意味も多少あったかもしれなかった。
「そうは言っても、遅かれ早かれ阿倍くんの名前は覚えることになるはずだったと思うし、よろしくね」
「ああ」
コミュニケーション力不足かもしれない。俺はそう思った。
特に面白い話題を持っているわけでもなければ、何でもないことを面白く語れるわけでもない。だから会話が袋に残ったパスタの切れ端のように細切れになってしまい、面白みのある印象を与えられず、結果として影が薄くなる。兄ならばきっとそうはならなかったはずだ。兄は昔からとても社交的な性格で、接しやすい感じのする人だった。もし兄が今俺の隣にいたなら、持ち前の話術で話に花が咲いたのだろうが、生徒会長であり今年から受験生でもある兄は、俺よりも先に学校に着いていた。
教室に着いても日野はマスクを外さなかった。だが教室にいるメンバーは当然日野の生姿を昨日拝見しており、有名人の群れがまた一つ大きくなっていた。昨日の段階で連絡先を交換し、特にこれ以上絡みに行く必要もなかった俺は、イヤホンを耳に詰め込み、音楽をシャッフルさせて聴いていた。
そしてその日は終了。授業もほどほどに理解し、味気ない1日だった。