君が見せてくれた、私の世界
「なんで謝るの?」


「…っ…!
そう、だよな…。」



どうしてか分からないけど、一瞬。


一瞬だけ…冷泉くんは、悲しそうな目をした。



「悪い。
想世架には関係なかったよな。
…そろそろ帰るわ。」



じゃあな、と笑いながら、冷泉くんは帰って行った。


関係ない…か。


冷泉くんが言ったことは間違ってない。


だけど…悲しい。


関係ないって、分かってるけど…辛い。


冷泉くんのこと色々知りたいのに。



「…ううっ…ふっ…ああっ…。」



冷泉くんがいなくなったリビングには、ほんのりと彼の香水の香りが残っていた。  


柑橘系の爽やかなシストラスな香り。


彼の残り香の中で、私は…涙をこぼした。





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