君が見せてくれた、私の世界
「……っ、そう、だよな。
お前は…お袋みたいに死んだりしないよな。」


「なんだか冷泉くんらしくないよ〜?
ね、見て!
紅葉…綺麗だねぇ…。」



にこにこと笑いながら、私は冷泉くんの方を向いて紅葉を指さす。


冷泉くんが…泣きそうな顔をしていても。


ずるい私は、知らないふり。



「想世架。」


「……っ!」



一気に、視線が上がる。


見上げていた紅葉が…手で触れられるくらい近くにある。


冷泉くんがわたしを抱き上げて、目を合わせると…微笑んだ。



「……冷泉、くん…?」


「千暁。」


「……?」


「俺の名前。
千暁って呼んで。」



ドクンッ、と心臓が音を立てる。


冷泉くんの名前を……呼ぶ。


あんなに呼びたかった名前なのに、いざ呼ぶとなると…恥ずかしい。



「ほら、呼んでみ?」


「……っ、ち、あ…きぃ……。」


「……可愛い。」



恥ずかしくて俯こうとしても、冷泉くんの顔より私の方が今は高いから。


…意味がなかった。




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