君が見せてくれた、私の世界
「……少し、歩くか。」



そう言うと、千暁は私を車椅子に乗せて…そのまま土手沿いを歩き始めた。


ゆったりと流れる時間。


千暁が押してくれる車椅子は、何故かいつもよりも優しく感じる。



「……千暁。」


「ん?」


「……紅葉、綺麗だね。」


「あぁ。綺麗だよ。」



言いたいこと、あったけれど。


臆病な私は…言えなくて、誤魔化した。



本当は、千暁に"好き"って言おうと思ったのに。


こんな私を好きでいてくれて、ありがとうって。


今が一番、幸せだよって。



「……。」



この時間が、ずっと続けばいいのに。


いっそ止まっちゃえばいいのに。


そうすれば、病気の進行だってしなくなる。


幸せなままでいられるのに。





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