君が見せてくれた、私の世界
それから、数ヶ月。


私の日常は、特に大きな変化もなくただ過ぎていった。
…いや、全く変化が変化がなかったわけではない。


明らかに、身体がおかしくなってきている。


もう、自分で分かるくらいに。



「想世架ちゃん。
聞こえてる?大丈夫?
……大丈夫そう、かな。」



看護師さんが声を掛けてくれるのに、反応を示すのが辛い。
身体を動かすのが、しんどい。


みんなで出掛けたあの日と比べて、目に見えて衰えた気がする。



「……あ…。」



ふと、枕元に目を向けるとそこには病院に併設されている図書館で借りっぱなしになっている一冊の本。


返しに行くの忘れてた…。
確か、返却日は今日だったはず…。
看護師さんにも頼みそびれちゃったし……。



「自分で行くしか、ない…。」



返さないと、次に借りたい人が借りれなくて困っちゃうかもしれない。
早く返さなきゃ…。


そう思い立つと、震える腕でなんとか身体を支えて車椅子に座り込む。



「…くっ……はぁ……。」



それだけで息が上がる。
なんてことない動作なのに……。
それだけ、やっぱり病気が身体を侵食し始めてるんだ…。


それを実感して、暗い気持ちになるのを誤魔化して私は、図書館へ向かった。




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