君が見せてくれた、私の世界
「はい、じゃあ白鷺さんね。
わざわざありがとう。」


ぺこり、と司書さんにお辞儀をしてカウンターを後にする。



せっかくだから、なにか借りていこうかな…。
最近は、千暁も忙しくて来れない日々が続いてるし…。


なんて思いつつ、本棚をぐるぐるしてると一冊の本を見つけた。



「『薔薇の赤と、黒檀の黒』…?」



なんだろう。
バラ、の赤と…黒檀の黒…?
気になって取ろうとして、…諦めた。
私には取れない高さにあるから。


司書さんを呼びに行こうか…。
それか、頑張って立ち上がってみようか。
色々考えた結果…出た結論は、諦め。
他にもいい本が沢山あるはずだもんね。


他の本にしようと、踵を返そうとした時。
私の頭の上から手が伸びてきて。
私のお目当ての本を、とった。



「あ……。」


「これ、でしょ?
君が取りたがってた本。」



はい、と差し出されるのはさっきの本。
顔を上げて受け取ると…そこには、1人の男の人が私を見て微笑んでいた。


……かっこいいなぁ…。
千暁とはまた違うカッコよさがある。
優しそうで、ふわふわしてて…なんだか、陽だまりみたいな人。




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