君が見せてくれた、私の世界
「あれ、違った?」


「ち、違くないです!」


「そう、良かった。はい、どうぞ。」



そっと本を受け取ると。
その男の人は、優しく微笑んだ。
その瞬間、頬に熱が集中するのを感じて真っ直ぐにその人の顔が見れない。



「あ、ありがとう…ございます…。」



口から出たのは、本当に小さな声。
なにやってんの…。
もっと声張り上げないと、聞こえないでしょ…。
私のバカ……。



「いいえ、どういたしまして。」



私の小さな声は、男の人に聞こえていたみたいで。
笑って、返しくれた。



「あ、ちなみに。
それ…バラの赤、じゃなくて。
『そうび』の赤、だよ。」


「…そうび…?」


「うん。
薔薇って書くけど、本当の読みはそうび。
俺もその本読み終わるまでは、ずっとバラの赤って読んでたけどね。」



くすっ、と笑う男の人。
すごい優しく笑う人…なんだなぁ…。
大人びた人なのに、笑うと陽だまりみたいに優しく笑う。




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