君が見せてくれた、私の世界
「俺、そよちゃんの友達だよ。
そよちゃん嘘ついてないから。
……今日は帰るね。また明日。」


「あっ…!」



千暁にどんなに睨まれても、全く臆することなく直央くん。
あろうことか、いつも通り微笑んで…私の病室を出て行った。


嫌な沈黙が、私と千暁の間に流れる。
直央くんとさっきまでのあったかい、楽しい時間が嘘みたいに…今は冷たい。



「…あの、今日…学校だったんじゃ…。」


「昨日、受験が終わったから。
推薦だったから、これ以上学校で勉強する必要も無い。
気は抜けないが…お前に会いに来た。」


「推薦、とれたんだ…。
おめでとう…。」


「……ありがとう。」


「えっと、お茶…淹れるね…。」



お茶の用意をしようと、机の上を片付けようとしたら。
ギュッ、と力強く抱きしめられた。
苦しいくらいに。



「ち、あき…?」


「お前は、ああいう男の方がいいか?」


「えっ…?」


「爽やかで優しさの塊みたいな、あの男の方が好きか?」


「ちがっ……んっ!?」



違うよ、って言おうとしても。
千暁の唇で塞がれて、言葉が続けられない。



噛みつくように、答えなんて言わせないように。
まるで貪るかのようなキスに、私はただ溺れるしか出来なかった。




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