君が見せてくれた、私の世界
「……不安になった。」


「……ごめんなさい。」



やっと解放されたかと思うと、千暁は私を抱きしめて言った。
いつもより、少しだけ弱々しい千暁。
こんな千暁…あの紅葉狩りに言った日以来。



「お前が、俺以外の男と2人きりでいるなんて耐えられん。
お前は俺だけ見てて。」


「……千暁しか、見えてないよ。」


「本当か?」


「うん。
…どんなに、友達が増えても……私が恋愛対象で、見てるのは千暁だけだよ…。」



言ってて恥ずかしい。
恥ずかしさが勝ってきて、後半はもう何を言ってたか聞き取れなかったかもしれない。

それでも、きっと千暁なら聞いててくれる。

どんなに小さな声で言っても、千暁は…聞いてくれるから。
どんなにゆっくりでも、千暁は待っててくれるから。



「その言葉、忘れんなよ?」


「わ、忘れないよっ…!」


「……くくっ。
俺だって、お前しか見えてないんだ。
これから先も、ずっとお前だけ見てる。」



笑いながら、それでも。
真剣な眼差しを私に向けて…微笑んだ。
私が一番好きな、笑顔。



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