君が見せてくれた、私の世界
「……ぁ…、り………が、…と……ぅ……。」



その言葉と共に、直央くんは目を閉じた。
その途端、お母さんの泣いている声がいっそう大きくなった。


まだ、ほんのりと温かみのある指先にそっと…キスを落とす。
指先へのキスの意味。
“貴方を大切に思っています”



「ありがとう…直央くん……。
…あ、りっ……がとぉ……。」



ずっと我慢していたものがこみ上げてきて、声が震え始めた。

最後まで、笑っていられたかな。
君に褒められた、笑顔…出来たかな。
ありがとう。
私と出会ってくれて、ありがとう…。



直央くんの担当医さんが、直央くんが天国へ旅立ったことを口にすると。
直央くんのお母さんが、倒れてしまったみたいで看護師さんに運ばれた。


ずっと握り続けていた直央くんの手。
離すことなんて、できない。



「……想世架ちゃん。」


「………っ…せんせ…。」


「もう、離してあげて。」



先生がそっと、直央くんの手を握る私の手に触れた。
これから、ご家族の方たちが直央くんとお話するから。
…部外者は、ここでさようなら。



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