君が見せてくれた、私の世界
行きとは違う、ゆっくり…ゆっくりと押される車椅子。
すれ違うかのように、制服を着た男の子達が直央くんの名前を呼びながら走って行く。


でも…違うのは、それだけだけじゃない。


……私の大切な人が、ひとり。
遠くに行ってしまったこと。
それを見て、涙が止まらないこと。



「……先生…。」


「…なんだい。」



いつの間にか、夕方を迎えていた空を窓から眺めつつ口を開く。
色々、考えさせられた…。



「置いていかれる、って……嫌だね……。」


「……。」


「私…置いていく側の人間だから…置いていく方の辛さしか知らなかった……。
…でも、本当は…置いていかれるのも、すごく…辛い……。
置いていくより……つらい…っ…!」



今日のことで、感じた。
私は……置いていかれるんだって。
直央くんに、置いていかれる辛さ。
救えなかった、不甲斐なさ。
置いていかれる方にも、辛さが沢山ある。



「想世架ちゃん…。」


「……直央くんが、教えてくれた……。」



辛いのは、私だけじゃない。
それを教えてくれたのは…直央くん。




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