君が見せてくれた、私の世界
面会時間のギリギリまで、俺は想世架の病室に居続けて、帰宅する。

あの後、結局…想世架は1度も起きなかった。



「おかえり、千暁。」


「……ただいま。」



夕飯の支度をしてる親父に声をかける。


医者になると、告げたあの日から。
俺と親父の距離は…少しずつ、本当に少しずつ…近づいてると思う。

想世架のおかげだよ。

お前がいたから、俺を医者になりたいと思ったんだ。
医者になりたいと思ったから、親父との溝だって…少し塞がれた。



「なぁ、親父。」


「…?なんだ?」


「想世架のこと、なんとかできないか…?」


「……そうだな…。
俺も俺なりに、調べてはいるんだが…。」



親父にもちょくちょく、想世架のことは相談している。
医者に聞くのが1番なんだから。

…それでも、やっぱり。
想世架の病気は…現代医学では完治させるのは難しいらしい。



「研究者による研究は進んでいるんだが…それも、一朝一夕で出来るものじゃない。
少なくとも、5年はかかると言われてる。」


「5年……。」



俺は、何も出来ないままなのか…?
お袋の時みたいに…。
ただ、失うのを待つだけなのか?




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