君が見せてくれた、私の世界
「……想世架が、望むなら……。」



前に、お前は言った。
死にたくない、死ぬのは怖い。

俺に、そう泣きついてきただろ…?


もし…もし。
お前を死なせないと約束したが、それを破ることになったら…。


俺は、お前と一緒に死ぬよ。



「ひとりは、嫌なんだろ?
ひとりで死ぬのは怖いんだろ?
……だったら、いつでも一緒に死んでやるよ。」



けど、お前は…きっと、そんなこと望まねぇんだろうな。

優しいお前は、俺に…生きてほしい、って言うんだろう。
…俺が愛してるのは想世架だけなのに。



「……なんで、お前なんだよ…っ…。」



この世の中に、女なんて何人もいるだろ…。
その中で、なんで…想世架なんだよ…。
あいつ、沢山苦しんで来たじゃねぇかよ…。
いっそ、俺だったら…良かった。
想世架は…全てを楽しみにしていた。


学校に通っていた時、学校が楽しいと笑っていた。
そんなやつ、初めて見たよ。
抜き打ちテストや放課後の掃除。
あいつ、わくわくした顔で……。

想世架には、まだ…見た事のない世界が沢山ある。
俺もまだ少ない方だけど…あいつは、俺以上に少ない。
小さい世界しか知らない。


見せてやりたいって思ったんだ。
あいつに、想世架が知らない世界は…世界は広いんだってこと。



「今は…桜を見せてやらねぇと…。」



あんなに見たがってんだ。
絶対、見せてやる。




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