君が見せてくれた、私の世界
想世架の時は、止まったままのように何も変わらず過ぎていく。

が、俺の時は…毎回、違う色を見せる。



「ーー冷泉くん、今回のテストも1位だって。」


「ーーすごいな…。
さすが、冷泉家のお坊ちゃん。」



そんな話を耳にしながら、俺は医学部受験を決めた日の翌日から通い始めた塾の自習室に通いつめる。


想世架のところでやりたいのは山々だけど、ここの塾の自習室は参考書の数が尋常じゃないくらいに揃っているから、課題をするのにはもってこいの場所。


なんでも、県外からも通う人がいるような名門塾だったらしい。

親父が勧めてくれたところだから、俺にはよく分かんねぇけど。



とにかく、早くやるべきところまでは進めておかねぇと…。
早く、想世架のところに行きたい。



ーー「冷泉くん。」



早く、早く。
焦る俺に声をかけてきたのは、同じゼミを講習してる女。

お前なんかを相手にしてる暇はねぇんだよ。
そう思って、無視を続けているが…女は懲りもせずに俺を呼び続ける。



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