君が見せてくれた、私の世界
「……あら…あなた、もう来てたの…。
早かったのね…。」


「聖美…。」



音もなく、病室に入ってきたママ。
その顔には、疲れと…泣き跡が見える。


ごめんね、ママ。
最近のママは…泣いてばっかりだね。
もう、疲れちゃったよね。
私の面倒ばかりで……。



「そよ、いいお話よ…。」


「………いい、お…はな、し…?」


「えぇ。」



綺麗だったママはいつの間にか、白髪や皺が目立つようになっていた。
明らかに、疲れが目立っているのにも関わらず…ママは、私に微笑んだ。



「おうちに帰れるの。」


「……ぇ……?」



今、なんて言ったの…?
おうちに、帰れる…?

私が…おうちに帰れる……?



「九条先生がね、おうちに帰っても良いって言ってくれたのよ。」



おうちに、帰れる…。
でも、もうそれは……私が、長くないからだよね。


大丈夫だよ。
私、分かってるから。

もう、本当に…終わりなんだね。




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