君が見せてくれた、私の世界
その晩、私は夢を見た。

怖い夢じゃなくて、優しい夢。
温かくてホッとする夢。




『そよちゃん。』



心配そうに、私を見る瞳。

その声に私は、にっこりと微笑んでみせる。



「約束、守ってくれたんだね。」


『……うん。
そよちゃんが、ひとりで悲しい思いをするのは嫌だから。』



あの日と変わらない、優しい笑み。

変わらないその姿に嬉しくなる。
ありがとう、と言いたくなるのを我慢して。


私はそっと手を差し出した。



「連れてって…くれる…?」


『……。』



少しだけ、戸惑った顔をする。

困らせたかったわけじゃないのに…。
そんなふうに悲しそうな顔をしないで。


私、分かってるよ。
本当にもう、分かってるから大丈夫だよ。



『……本当に、いいの…?』


「……。」



そんなこと、言わないでよ。
いいわけないじゃない。
やりたいこと、沢山あったのに。

もっと、千暁の傍にいたかったのに…!
一緒に笑って、喧嘩して、泣いて……。
たくさんの思い出作りたかった!!



思えば思うほど、思いと共に涙が溢れてくる。

泣いても仕方ない、仕方ないんだよ。
そう頭では分かってるはずなのに、心が追いつかない。



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