君が見せてくれた、私の世界
ー千暁sideー



「想世架を退院させる……?」


「妻と決めたことなんだ。
千暁くんも、協力してほしい。」



大学の入学式を終えて、想世架の病院に来た俺はエントランスで想世架の父親に呼び止められた。


こんなこと今までになかったから、疑問に思いつつ…俺は、病院の中にあるカフェで想世架の父親と対面した。



「でも、あの身体で……。」


「……あの身体だからこそ、なんだって。」



おじさんの言葉に、俺は黙り込む。


最近の想世架は、正直、いつ…灯火が消えてもおかしくない…。


反応も薄いし、1回の発作で数日間眠ることも多い。



「……おじさんはそれでいいんですか?」


「……うん。
僕も、妻も…もう、良いと思ってる。
想世架は、ここまでよく頑張ったよ。」



想世架の退院。
これは、普通に喜べるものじゃない。


……もう、想世架は長くない。
これ以上治療を続けても意味が無いってことを示してるんだ。






< 269 / 312 >

この作品をシェア

pagetop